グルダ ~ ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ集 

2008, 06. 25 (Wed) 15:47

ケンプのCDと一緒に届いたグルダの4大ベートーベン・ソナタ集。
いわゆる3大ソナタに「告別」が入っている。4大ソナタなら「ワルトシュタイン」の方を入れて欲しかったのだけど。
グルダの2回目のベートーヴェン・ソナタ全集から収録されたもので、1967年録音にしてはとても音質が良い。

ベートーヴェン:ピアノソナタ第8番&第14番&第23番&第26番ベートーヴェン:ピアノソナタ第8番&第14番&第23番&第26番
(2005/06/22)
グルダ(フリードリヒ)

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グルダといえば、"クラシックを止めてジャズに転向したピアニスト"と漠然と思い込んでいた。
でも、実はクラシックを放棄したわけではなく、ジャズとクラシックの両方の世界で弾いていた。
彼がクラシックを止めてなくて、本当に良かった。それにスイングしていないジャズピアニストは受けないだろうし...。

グルダのベートーヴェン・ソナタは、久しぶりにスゴイと思った演奏。
ケンプを聴いた後だったので、何よりも躍動感と集中力がみなぎるダイナミックさに聴き惚れてしまう。
全体的にテンポが速いが全く崩れない安定した打鍵で、音も1音1音が明快なので、くっきりと曲の構造が浮かび上ってくる。
とても弾力がある音質なので、駆動力が要求されるベートーヴェンのソナタをダイナミックに弾くには、向いているような気がする。

というように、グルダのピアノを初めて聴いた時は、ダイナミックでスピード感もあるので幻惑されてしまった。
でも、他のピアニストとの演奏もいろいろ聴いていくと、耳も慣れてきたせいか、ちょっとこれは違うのでは...と思い始めた。世評がやたら素晴らしいけれど、音楽を聴くのに一番大事なのは、他人の評価ではなくて、自分の感覚。
何度か聴いていると、よく言われるグルダの「軽さ」を感じるけれど、ベートーヴェン演奏で期待する深みや重厚さがないのは別にかまわない。そういうベートーヴェンも悪いとは思わないので。
どうも好きになれないのは、その外形的な華やかさとは裏腹に、何か肝心な訴えかけるものがないように感じるところがある。
初期のピアノ・ソナタを弾いている時はそれほど気にならないとしても、中期の傑作や後期ソナタになると、それを段々強く感じるようになる。
ワルトシュタインや熱情ソナタの猛スピードは、指回りの良さを誇示しているようで、慌しい限り。もうパロディか冗談の世界。

グルダのベートーヴェンを聴くなら、この1967年にリリースした新録音のベートーヴェン全集ではなくて、1958年にリリースした旧録音のベートーヴェン全集の方を聴く方が、いろいろ感じるものが多い。
それに、1964年のザルツブルグ音楽祭のライブ録音は素晴らしい演奏。
いずれもグルダ独特の音楽性と才能のきらめきが聴き取れる。
この新録音でベートーヴェンを弾いているピアニストと同じ人が弾いているとはとても思えないくらいに、生み出している音楽の内容が違う。
結局、グルダは自分自身を表現するために、クラシックの曲を弾いているような気がする。
「ベートーヴェンをグルダで聴く」のではなく、「ベートーヴェンでグルダを聴く」というべきかも。

グルダは自分で作曲もする。一番人気がある曲は「aria」。
『グルダ-ノン・ストップ』にも収録されているが、You Tubeではグルダ自身(!)による「aria」のライブ演奏がアップロードされている。
とても美しい曲で、自分でも弾いたみたいな~と思わせられてしまう。
そこはかとなくジャズの香りが漂っているところがグルダらしい。

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