映画『敬愛なるベートーヴェン』 

2008, 08. 08 (Fri) 09:12

さほど評判にならなかった映画「敬愛なるベートーヴェン」をDVDで初めて見た。
原題は「COPYING BEETHOVEN」。これは、第9シンフォニー完成前後の時期に、女性の写譜師アンナ・ホルツ(この人物は架空らしいが)とベートーヴェンとの音楽をめぐる交流を描いたもの。
ベートーヴェンが生きていた時代は、作曲家の書いた譜面を写譜師が清書して、演奏家が使える楽譜にしていた。タイトルの「COPYING」というのはそれに由来している。(それにしても邦題のセンスは?)

敬愛なるベートーヴェン敬愛なるベートーヴェン
(2007/11/07)
エド・ハリス.ダイアン・クルーガー.マシュー・グッド.フィリーダ・ロウ.ニコラス・ジョーンズ.ラルフ・ライアック

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「第9」初演をめぐる盛り上がり、その後に作曲した「大フーガ」の不評という、天才の晩年期の出来事に的を絞っているが、史実と違う設定がところどころある(この頃には会話帳でしか会話していたかったが、映画ではほとんど口頭の会話で話が進んでいるとか)ので、??ということもあるが、それでも2時間弱という時間のわりによく出来た映画。
ベートーヴェンの生きていた時代のコンサートや、彼が使っていたであろう補聴器やピアノなどは、こういうものだったのかなと想像することができる。(時代考証が正しければという前提で)

この映画で使われている曲は、ベートーヴェンの作品中一般的にはさほどポピュラーではない曲が多い。後期の弦楽四重奏曲、合唱幻想曲、ピアノ・ソナタ第32番など。
ベートーヴェンをかなり聴いていないと、なんの曲かわからないかも。
たまたま「11のパガテル(作品119)」を聴いていたら、ベートーヴェンがうっかり貶したアンナの作曲した曲のフレーズは、第5曲に少し似ているような気がした。

地味めの映画ではあるが、なによりエド・ハリスが演じるベートーヴェンが第9を指揮する姿が良い。
指揮の仕方はホグウッドが指導したらしい。
史実では、ベートーヴェンはこの頃には聴覚を失っているので、オケの楽長が指揮をしたが、ベートーヴェンも指揮台で拍子をとって指揮をしたという。

それに、ベートーヴェンが第9初演前の楽屋でアンナ・ホルツに「私は音のない世界で生きていると思われているんだ。そうじゃない。頭の中は常に音楽で満ち、決して尽きない。それを書きとめるのが唯一の安らぎだ。」と語る。
実際このような言葉を言ったことがあるのかどうかは知らないが、音楽が頭の中でやむことがなかったのは本当だろう。

第9は合唱が入っているのであまり好きではなかったが、CDラックを探すとCDはチェリビダッケの全集に入っている1枚だけ。
これを聴いた記憶がないので、聴いてみるとチェリビダッケらしくゆったりとしたテンポで、ドラマティック性には欠けるが、そう悪くはないような気がする。
チェリビダッケのこの演奏はクセがあるらしいが、比較対照がないので私にはどう独特なのかがわからない。
名盤はフルトヴェングラー指揮の1951年盤だとされるが、フルトヴェングラーはあまり好きではないので、結構評判が良い(ただし第4楽章以外)ジュリーニとベルリン・フィルのCDを注文した。

ベートーヴェン:交響曲第9番ベートーヴェン:交響曲第9番
(2004/01/21)
ジュリーニ(カルロ・マリア)ヴァラディ(ユリア)

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当時の不評だった弦楽四重奏曲第13番の「大フーガ」。
たしか後期のカルテットのCDを買ったことがあるような気がしたので、探してみるとアルバンベルクの13-16番のCDセットがラックの埋もれていた。
たぶん一応はコレクションとして持っておこうと思って買ったのだろうが、これも聴いた記憶がない。
元から弦楽四重奏曲はどんな曲でも苦手なので、この映画を見なかったら、一生聴かなかったかも。まったく何が幸いするかわからない。
この演奏では、第13番は全部で7楽章から構成され、第6楽章に大フーガ、第7楽章がフィナーレ。

聞いて見ると、「大フーガ」は現代人の耳には不評を買うような曲ではないが、知っている現代音楽の中でたとえて言うなら、ライヒのミニマルミュージックに少しつながるような響きがする。
構造的に分析すれば、当時にしては尋常ではない音の進行をしているらしい。
ストラヴィンスキーの「春の祭典」のごとく、ベートーヴェンの時代に理解されるには、この曲は早すぎたんだろう。

ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第13番ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第13番
(2006/09/20)
アルバン・ベルク四重奏団

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