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『リヒテルが愛した執念のピアノ』
リヒテルがヤマハのグランドピアノを愛用していたのはよく知られている。
なぜロシアのピアニストが、定評のあるスタインウェイではなく、ヤマハを使うようになったのか。
ヤマハはそれほど優れたピアノメーカーにどうしてなり得たのか。
そこをドキュメンタリーでまとめたのが、あのNHKのプロジェクトXで放映された「リヒテルが愛した執念のピアノ」

プロジェクトXは、技術者版スポコンもののようであまり好きではない。が、DVDではなく電子書籍でそのストーリーが販売されていたので、早速ダウンロードした。
テレビ番組のノベライゼーションなので、簡潔にまとまっているが、取材したものをかなり凝縮しているようなのでノンフィクションとしては細部の情報がやや不足気味。
それでも、ヤマハの調律師(村上さんという人)と、あの”氷の巨匠”ミケランジェリ、ミケランジェリの専属調律師タローネ、そしてリヒテルとの出会いは、技術者の意欲と執念が不思議な縁を手繰り寄せたかのようで、面白い話がたくさん詰まっていた。
リヒテルが浜松のヤマハ工場にわざわざ出向いて、自分が使うピアノを作っている人たちのために、2時間以上もコンサートをしたという話は、なかなか感動的。
あのリヒテルが自分たちのためだけにピアノを弾いてくれるなんて!ヤマハの工場の技術者や職人がどれほど感動したことか。
リヒテルは、とてもヤマハのピアノが気に入っていて、技術者や調律師を信頼していたんだろう。
彼が弾く弱音のように、リヒテルはとても繊細な心の持ち主だったのかもしれない。

ヤマハは、リヒテルが気に入るピアノを作れるまでになったのは、多くの人の意欲と努力があったのだろう。
しかし、スタインウェイやベーゼンドルファーなどの伝統的なピアノメーカーの牙城で”ヤマハ”が注目されるようになるには、何かのきっかけが必要である。
その点では、あの完璧主義者の気難しいミケランジェリが、タローネのところに修業しにきていたヤマハの調律師の村上氏をなぜか気に入って、タローネを差し置いてコンサートピアノの調律を任せるようになったのが、まさに最大の幸運だったように思う。
”ミケランジェリの調律師”という肩書きがあれば、少なくとも注目されるのは確実。それに完璧主義者のミケランジェリの要求を満たすだけの技術があるのだろうと人は思うはずだ。
これがきっかけで、村上氏はマントン音楽祭の調律師に招聘され、そこでリヒテルに出会い、彼の弾くピアノ(ヤマハではないが)を調律するという大役をまかされ、欧州の新聞でその調律技術を賞賛される。
村上氏がヤマハ社員なので、ヤマハの知名度とブランドイメージがあがっていった出来事だった。

コンサート・グランドは職人芸と工業技術が結晶した芸術品。膨大な数の部品と製造工程で、部品によっては、0.01ミリ単位の精度が要求される。
しかし、如何に技術の粋を集めて作ったピアノといえど、その能力を最大限に引き出すのは調律師の仕事。調律といっても、家庭のアップライトピアノの調律とはレベルが違う。
ピアニストが要求するピアノの音色やタッチを実現させるためには、100分の1ミリの厚さの紙でピアノの鍵盤のタッチを調節する。職人技というしかない高度な技術が必要なのである。

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tag : リヒテル 伝記・評論

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クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

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