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BBC LEGENDSのミケランジェリ
ミケランジェリの正規録音は、ほとんどDG盤とEMI盤。
それ以外のレーベルから出ているもので音質と演奏内容の両方とも質的に揃っているのが、ワルシャワ・ライブとBBC LEGENDS。

BBC LEGENDSは3枚に分売されているものと、それが1セットで販売されているものの2種類。
曲目がDG・EMI盤と重なるものもあるとはいえ、この3枚の中では1960年前後に録音されたスカルラッティ、クレメンティ、ベートーヴェン、ショパンのソナタ集が選曲が一番面白い。
クレメンティとショパンはライブ録音なので、ちょっと音がこもっている気がしないでもないけれど、60年くらいのライブ録音ならそんな悪い音ではなくて聴きやすい。
この年代のミケランジェリの演奏は、メカニックが完璧な上に、完璧さと音色・音色を重視した後年とは違って、多少のキズはあっても”冷徹さ”が影を潜め、抑制しつつも感情を込めて弾いているように感じる。

Scarlatti: 3 Keyboard Sonatas; Beethoven: Piano Sonata No. 32; etc.Scarlatti: 3 Keyboard Sonatas; Beethoven: Piano Sonata No. 32; etc.
(2003/10/21)
Ludwig van Beethoven、

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ベートーヴェンの最後のソナタは、アラウ・ゼルキン・リヒテルのテンポを遅くとった内省的な晩年の演奏ばかり聴いていたので、ミケランジェリの鋭角的なタッチと速めのテンポの演奏は新鮮。(さすがにバックハウスの猛スピードにはかなわないけれど)
グルダもかなりの快速テンポだったけれど、常に軽さ(軽やかさではなく)を感じてしまうところが難点。
ミケランジェリはどんなに速いテンポで弾いていても、音が鋭くクリアで緊迫感があり、曲の持つ重みと深さを失わないところはさすが。

第1楽章冒頭からテンポは速く揺れも少なく、テクニカルな正確さで安定感と崩れることのない堅牢さがあるところはミケランジェリらしい。
重厚という感じではないけれど、鋭角的でカッチリとした造形力があり、それほどダイナミックにディナーミクを強調することなく、クールな表情。

アリエッタの主題は、すごく遅くも速くもないほどよいテンポと、柔らかで優しいタッチが、やや物思いにふけるかのように瞑想的な雰囲気。
第1変奏から第2変奏は、さらりと歌うように軽やかで明るくて、dolceの甘く艶のある音色が綺麗。
第3変奏になると鋭いリズムで高揚感も十分。ここは符点のリズムが緩くなる演奏がなぜかとても多いけれど、ここもミケランジェリはシャープなリズム感が崩れることなく。
第4変奏に入っても、それほどテンポが落とすことなく、やや強めの弱音で弾いているので(ここをピアニシモの弱音で弾くピアニストは多い)、透明感のある硬質で張りのある響きがとても綺麗に聴こえる。右手の旋律だけでなく、左手のオスティナートも明瞭。
第5変奏は、ダイナミックで感情が横溢していくように高揚していくわけではないけれど、シャープで精密な左手のアルペジオの推進力が強く、強弱の起伏も明瞭で、じわじわと着実に階段を上り詰めていくような緊迫感のある盛り上がり方。
トリラーが通演低音のように響くフィナーレは、それまでの高揚感が尾を引いているように、強めの弱音と鋭いトリルで明るい色調。
”悟りの境地”とか”天上の調べ”というよりは、現世的な世界における賛歌とか歓喜のようなものを感じてしまう。
ここは天上の調べのように静かに弾く演奏に慣れているし、そういう弾き方の方が好みだけれど、こういう確信に満ちた明るさのあるフィナーレの演奏もいくつか聴いたし、開放感があって爽やかなので、もうすっかり慣れました。


ミケランジェリは、リサイタルでもクレメンティやガルッピをよく弾いていた。
バロックと古典音楽は単調で退屈してしまうので苦手。でも、ミケランジェリのスカルラッティやクレメンティのソナタを聴くと、曲の表情がいろいろ変わって面白く聴ける。
スカルラッティの小さなソナタがこんなに格調高い音楽とは思わなかった。
クレメンティはスカルラッティとは違って、ベートーヴェンの初期のソナタかと思うような古典時代にしては凝ったつくりをしている。苦手なモーツァルトのソナタよりもずっと面白い。
ミケランジェリが弾くと曲の輪郭がくっきりと鮮明に浮かんでくるのは、イタリアのピアニストだからというわけではないでしょうが、若い頃のポリーニも造形力は素晴らしかった。
ベートーヴェンは、ピアノ曲については、モーツァルトよりクレメンティの方がピアニスティックで素晴らしいと評価していたらしい。そういう評価もわかるような気がする。

ショパンはあまり聴かないのでよくはわからない。
ショパンを弾くピアニストにありがちな感情の揺れを強調した大仰な演奏ではなくて、叙情性を込めながらも抑制を効かせた演奏なんだろうと思う。
第3楽章の葬送行進曲の第2主題は、感傷的にはならない程度にルバートを効かせていて、ささやくような弱音の響きが美しい。


これはセット版。上のCDに収録されていない曲も含まれている。
Michelangeli: Portrait of a LegendMichelangeli: Portrait of a Legend
(2007/11/20)
Ludwig van Beethoven、

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<収録曲>
ディスク:1
1. Grieg - Piano Concerto (1965)
2. Debussy - Preludes Book 1 (1982)

ディスク:2
1. Beethoven - Piano Sonata No.12 in A flat, Op. 26 (1982)
2. Beethoven - Piano Sonata No.4 in E flat, Op.7 (1982)
3. Debussy - Hommage a Rameau (1982)
4. Ravel - Gaspard de la nuit

ディスク:3
1. Scarlatti - Keyboard Sonatas K11, K332, K172 (1961)
2. Beethoven - Piano Sonata No.32 Op.111 (1961)
3. Clementi - Piano Sonata in B flat, Op.12 No.1 (1959)
4. Chopin - Piano Sonata No.2, Op.35 (1959)

tag : ミケランジェリ スカルラッティ ベートーヴェン

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yoshimi

Author:yoshimi
<プロフィール>
クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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