ルドルフ・ゼルキンのBBCライブ 

2008, 10. 06 (Mon) 19:16

ゼルキンの演奏を聴くなら、スタジオ録音よりもライブの方が絶対に良いというのは有名な話。
ライブの方がいつも良い出来だという訳ではないだろうが、それでもライブ録音のリリースを待っている人は多いらしい。
ベートーヴェンのソナタにしても、スタジオ録音にはとても慎重で、生前にはリリースを許さなかった録音もある。(ゼルキンの死後に、なぜか次々にリリースされているが)
ゼルキンのライブを収録したCDはそう多くはないが、晩年に録音したベートーヴェン後期ソナタのライブ(グラモフォン)と、75歳のカーネギー・ホールリサイタル(ソニー)とかが出ている。

BBCもライブ音源をいくつか持っていて、最近次々とリリースされている。
これは、バッハ、ベートーヴェン、レーガーというドイツものを収録したもの。

Rudolf Serkin performs Bach, Reger & BeethovenRudolf Serkin performs Bach, Reger & Beethoven
(2006/04/18)
Johann Sebastian Bach、

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バッハはどうも苦手だが、ゼルキンのピアノで聴くと、意外と起伏の多い曲に聴こえて、退屈することはない。
レーガーははじめて聴くが、音が多いと(いうより多すぎる)ので、ブラームス的な響きはするが、より複雑怪奇な感じの音楽に聞こえる。
和音が多用されている上、変奏もフォルテでがんがん鳴らす曲が多いので、最後の方になると聴き疲れてしまう。これはゼルキンの演奏の問題というよりは、レーガーの曲づくりがそうなっているせい。
ライブなので観客の反応もわかるが、今ひとつ盛り上がっていないような感じ。レーガーをコンサートで弾くピアニストは少ないので、稀少な録音ではある。

やはり締めくくりは、ベートーヴェンで、テレーゼとワルトシュタイン。
ソニーからテレーゼの1973年のスタジオ録音(3大ソナタとのカップリング)があるが、同じ1973年の録音でも、このライブの方がはるかに良い。
ライブの方がテンポが若干遅く音の響きが深く豊かで、第一楽章の優しさと繊細さ、第2楽章の躍動感は、スタジオ録音では聴けない。
ゼルキンのピアノはよく端正と言われるが、ライブでは一音一音が違って弾かれるかのように、非常に細かい表情の揺らぎがあって、それが線として連続して流れるととても自然な情感が感じられる。
スタジオ録音は録音がクリアだが、この揺らぎの部分がかなり消えているので、シャープで端正な音楽に聴こえてくる。
曲線と直線の違いのようなもので、曲線的なライブの演奏の方が本来のゼルキンらしい。
ゼルキンのワルトシュタインは、若干速めのテンポではあるが、音色に丸みがあり、緩急と強弱を細かくつけて、表情豊か。
特に第2楽章がよく、柔らかで澄んだ響きと深く力強い響きが交錯して、繊細かつ雄渾な曲の奥行きがよく出ている。
聴衆の反応も、レーガーとは違って、ベートーヴェンではとても良くなっている。
このCDを聴くと、やはり評判通りゼルキンのライブ録音は素晴らしい。もっと聴いてみたいと思ってしまう。
ゼルキンのライブ特有のハミングしているようなフンフンいう声と、どったんばったんするペダルの音がよく聴こえてくるが、これは彼の音楽の一部だと思うしかない。

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