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ゼルキン ~ モーツァルト/ピアノ協奏曲第20番、第21番、第23番、第24番
随分昔にモーツァルトのピアノコンチェルトくらいは一度聴いておこうと、ゼルキンとブレンデルのCDを買った。
それも、両方とも、2曲しか書かれなかった短調の協奏曲である20番と24番のカップリング。
モーツァルトのコンチェルトで何度も聴きたいと思うのは、この2曲と23番。
23番はポリーニ/ベーム/VPOの演奏がとても気に入ったので、DVDまで揃えた。

どうもブレンデルのモーツァルトとは相性が合わなかったので、1回聴いただけで終わった。
ゼルキンの方は、”モーツァルトらしい”ピアノのようなそうでないような曖昧さが残って、なぜか何度も聴いている。これで5回は聴いたはず。
ゼルキンのベートーヴェンを集中的に聴き始めたので、モーツァルトもAKGのヘッドフォンをつけて、集中して聴く。

モーツァルト:ピアノ協奏曲第20&24番モーツァルト:ピアノ協奏曲第20&24番
(2007/09/05)
アバド(クラウディオ) ゼルキン(ルドルフ)

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20番が1981年(78歳)、24番が1985年(82歳)という超高齢の時の演奏。まだ現役でコンチェルトを破綻なく弾き切るだけでもすごいと思う。
77歳になるブレンデルは、全盛期のまま(といっても過ぎているとは思うが)引退したいといって、2008年で演奏活動を止めると発表していたが。

ゼルキンのモーツァルトは、全体的にはテンポはあまり速い設定ではなく、技術的な問題はそれほど感じない。
といってもテンポが上がって音が込み入っているところでは、もたついたり、指がもつれかけるところがないとはいえないが、ゼルキンの演奏の場合は、それはあまり気にならない。
いずれも短調の曲であるが、ゼルキンのピアノには、悲嘆さや悲痛さといった感傷は稀薄で、なぜか穏やかな安息感と人生を悟ったかのような哀感に包まれている。
20番はとても良い演奏だと思うが、24番はそれに比べると表情の起伏がやや少なくなったような感じがする。
4年の歳月の流れを感じてしまうが、それでも音色の美しさと繊細な情感で聴かせてくれる。

Mozart: Piano Concertos Nos. 21 & 23Mozart: Piano Concertos Nos. 21 & 23
(1990/10/25)
Wolfgang Amadeus Mozart、

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21番と23番のコンチェルトを収録したCDも聴いた.
21番は私は好きな曲ではないが、第2楽章のアダージョは”みじかくも美しく燃え”という映画に使われているので有名。
しかし、ゼルキンのピアノで聴くと、こんな素敵な曲だったのかと見直してしまう。
堂々としつつ愛らしい第1楽章、夢見るような第2楽章、躍動感と生気に満ちた第3楽章と、各楽章の曲想がきちっと弾き分けられて、第3楽章の明るさと心が弾んでいるかのような軽やかさは、23番の第3楽章とは全然違う。
どうしてかよくはわからないが、ゼルキンの感じる音の流れがそういうものなのだろう。
特に第1楽章は、ピアノの粒立ちの良いやや硬質なタッチと柔らかく響く音色が、この曲の典雅で格調高い旋律によくあっている。特に、中間部で短調に転調してオクターブで移動していくところは、とても流れるような哀感があって、美しい。
モーツァルトは、たとえ長調のコンチェルトであっても、転調してはさまれる短調の旋律や緩徐楽章の方がはるかに印象的。

23番の方は、ポリーニ/ベームの演奏を聴きなれていたせいか、かなりテンポが遅く感じる。
ゼルキンがシュナイダーの指揮で録音した(たぶん1960年前後だろうか)引き締まったテンポの演奏ともかなり違う。
第3楽章は、ベートーヴェンはAllegro assai と指示している。ポリーニのピアノは若さがはじけるような躍動感がある。
ゼルキンは若干遅めのテンポをとり、1音1音を丁寧に弾いていて、ポリーニのような躍動感はない。
そういう演奏解釈なのかもかもしれないので、何回か聴くとこちらもそのテンポに慣れてくるもの。
ポリーニの演奏が直線的だとすれば、ゼルキンはところどころかすかに遅れ気味に入ったり、強弱を細かく揺らしたりと、曲線的。
若さ特有の躍動感といったものはないが、じんわりとにじみでてくる喜びみたいなものがある。これはこれで、若いピアニストでは真似のできない味がある弾き方とは言える。
23番は第2楽章のアダージョが特に素晴らしく、何よりも繊細さと優しさと同時に悲哀を漂わせた弱音の響きが美しい。

協奏曲としてはどうかな~と思うところもあって、必ずしも全てが名演だとは言えないが、それでも、軽やかで流麗なモーツァルトではなく、ゼルキンしか弾けない訥々とした語り口のモーツァルト。
何度も聴いていると、このゆったりとした流れと、温もりと哀感を帯びたピアノが、とても心地よく感じるようになってくる。
1音1音をとても大切に弾いているのが良くわかる。ピアノの粒立ちも音色も良いが、音の流れ自体はよどみなく流麗というよりは、幾分たどたどしさの残る感じがするが、そのせいか演奏の中にピアニストの息遣いが感じられる。(いつもの通り、ゼルキンがフンフンと歌いながら弾いている声が聴こえるし)

アバドとLSOなら、もっと快活で生気溢れた演奏もできるだろうが、自己主張は控えて、ゆったりとしたゼルキンのピアノに合わせている。
晩年のアラウがベートーヴェンのピアノコンチェルトを録音した時も、アラウをとても敬愛していたデイヴィスとオケ(ドレスデン・シュタッツ・カペレ)も、アラウのピアノに寄り添うように伴奏していた。
同じ音楽の世界にいる者として、80歳を超えてもなおステージで弾き続けるピアニストへ敬愛の念を抱かずにはいられないのだろう。

tag : ゼルキン モーツァルト

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Author:yoshimi
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クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
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