ツィメルマン ~ ラヴェル/ピアノ協奏曲 

2008, 10. 16 (Thu) 01:58

何年もCDラックの飾りと化していたツィメルマンのラヴェルのピアノ協奏曲のCD。
ミケランジェリの名盤を買う前に、ラヴェルのピアノ協奏曲とはどんな音楽なのか確認するために聴いてみた。
このCDには、ブーレーズの指揮による「高雅で感傷的なワルツ」と、「左手のためのピアノ協奏曲」が収録されていて、珍しいカップリング。

ラヴェル:ピアノ協奏曲ラヴェル:ピアノ協奏曲
(2002/09/25)
ブーレーズ(ピエール)

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ラヴェルのト長調のコンチェルトは、冒頭からパレードが始まるかのような明るいファンファーレで始まる。
ピアノがグリッサンドでハープのように流れ、次々に曲想とリズムが移り変わっていく。メカニカルな動きの面白さを追求しているようなところがある。
ガーシュインのような和音の響きやジャズ風の音づくりあちこちで感じるが、ラヴェルはジャズ音楽に多少は影響されていたらしい。東洋(というかオリエンタル風)のエキゾチックな感じもする。
なんとも説明しがたい音楽だけど、ドビュッシーよりもはるかに面白い。
第2楽章はその美しさで有名。主題がとても簡潔だが、途中でイングリッシュホルンのソロが主題を奏でて、ピアノの伴奏が入っているところは夢心地。
第3楽章では、なぜか「ゴジラ」(もちろん日本の本家の方)のテーマが聴こえてくるという変なところがある。
これはもちろんラヴェルのせいではなく、ラヴェルを尊敬していたかの有名なゴジラの作曲者の伊福部昭が、ラヴェルの旋律を転用したから。
「ゴジラ」を連想する日本人にとっては、幾分ユーモラスで懐かしい感じがしたりするであろう面白い楽章だった。

ミケランジェリのピアニズムに批判的だったリヒテルが、唯一このラベルのピアノ協奏曲の録音だけは絶賛していた。
この曲は、感情的なものを一切排除したところで成り立っている音楽なので、精緻なメカニックの極地であるミケランジェリのピアニズムにぴったりと合っているのだそう。
ある年友人・知人たちがリヒテル宅に集まって新年を祝うときに、ミケランジェリのこのコンチェルトのCDをかけていた。

ツィメルマンは技術的には完璧で、音色も多彩、響きも豊かで、ミケランジェリの演奏にはひけをとらない。
大きな違いは、ツィメルマンは伸びやかで幅のある響きと、ミケランジェリは硬質なクリスタルのように研ぎ澄まされた響きというところか。それにミケランジェリが時として鳴らす妖艶な弱音は、ツィメルマンにはない。
ミケランジェリなら、特有の冷たい響きと透明感のある音質で、ずっとシャープな演奏になると思う。

「左手のためのピアノ協奏曲」は、ト長調協奏曲とは打って変わって、冒頭から重苦しい雰囲気の菅楽器で始まり、ピアノも低音域中心に荘厳な響きで続く。
この曲は戦争で第一次世界大戦で右手を失ったピアニストのウィトゲンシュタインのために作った曲。
楽譜を見ずにCDだけで聴くと左手だけで弾いているとは思えないが、和音や幅広い音域を同時に弾くには制約があるので、その分オケの方で音の厚みを補強しているらしい。
ラヴェルの管弦楽部分は圧倒的な迫力があるが、音型も面白いし、リズム感・色彩感が豊かで、聴かせる音楽だと思う。
ピアノもそれに合わせて、左手だけとはいえ、非常にダイナミックな動きと厚みのある音色で響かせている。
1楽章だけの構成だが、形式からいえば3部構成。
中間の第2部はピアノソロが美しく流れる。
第3部はまたガーシュインのようなジャズ風のメロディと音が響く。
終幕ではピアノソロが登場。アルペジオをペダルで響きを持続させておけば、かなりの音が弾けるので、厚みのある音の配列のように聴こえてくる。
ラストは、宇宙ものの映画のサントラで聴くような壮大な感じのする音で締めくくっている。

ラヴェルは印象派に分類されているけれど、曲の構造がかっちりしていて、音の流れにストーリー性があるような気がする。
苦手なドビュッシーよりも、ラヴェルの音楽の方がずっと合うと思ったのもそのせい。
この左手のコンチェルトは、ト長調協奏曲とは違ってかなり重苦しい曲なので、ユニークな特徴を持つにしては、馴染みにくい曲だと思う。

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