ゼルキン ~ メンデルスゾーン/ピアノ協奏曲 

2008, 10. 23 (Thu) 01:14

メンデルスゾーンといえば、ヴァイオリン協奏曲が有名で、冒頭のヴァイオリンが奏でる旋律は一度聞くとなかなか忘れられない。
あまり知られていないが、メンデルスゾーンはピアノ協奏曲も数曲書いている。
若書きのため完成度が低かった曲もあったせいか、現在よく演奏されているのは第1番と第2番の2曲。
第1番はcon fuoco(火のように生き生きと、激しく)と指示のあるように、ドラマティックな性格を持っていて、情熱的な主題が印象的でピアノも技巧的な華麗さが目立つので、第2番よりも演奏効果は高いと思う。
オクターブ奏法やアルペジオを多用し、右左手で弾かれるスケールが高速でピアノの鍵盤上を駆け巡るという、技巧的に華々しい曲。
特にフィナーレは圧倒的に第1番が華やかで、主題の展開もわかりやすい。
第2番はより憂いの強い叙情的な曲なので、ピアニスティックな華麗さが幾分控えめな感じがする。第2楽章は緩徐楽章とはいえスケール感があって、これは第1番よりもずっと良いと思う。


この2曲の協奏曲を録音しているピアニストはそれほど多くはない。
ルドルフ・ゼルキンの演奏が定評があるみたい。
10年以上前に買ったシプリアン・カツァリスのCDは、ゼルキンとは違った演奏だけれど、これも良い演奏だと思う。
この2人のピアニストの演奏のどちらをとるかは、聴く人の好みの世界。
シフも録音しているが、なぜかモーツァルトを聴いている気分になってくる。
軽めのタッチでスタッカート気味に音をきざみながら弾いていて、テンポは速いのだが力強さの点で迫力不足で、第1楽章はcon fuoco になっていないのが難。
ゼルキンとカツァリスを聴いた後なので、余計にそう思うのかもしれない。
                       
                                

2枚しかもっていないカツァリスのCDの1枚が、このメンデルスゾーンのピアノ協奏曲集。
カツァリスは現代でも有数のヴィルトオーゾ。
ゼルキンよりはやや遅めのテンポ。技巧的にパーフェクトで要所要所で力強さをみせつつも、音の響きが元来やらかななものがあるし、ところどころ力を抜いて優しげな音を出すので、表情が細かく変化する。
ゼルキンのピアノに比べると、メンデルスゾーン特有の優雅で軽やかな雰囲気が強く出ている。
逆に、マズアが指揮しているオケの響きとテンポが重ためかなという感じがする。

Mendelssohn: Piano Concertos Nos. 1 & 2Mendelssohn: Piano Concertos Nos. 1 & 2
(1994/04/25)
Felix Mendelssohn、

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カツァリスの演奏が”柔”だとすれば、ゼルキンの演奏は”剛”。
かなりの高速だが、テンポやリズムが大きく揺れることなく、インテンポで弾いている。
フォルテで高速のスケールやアルベジオが上昇下降を繰り返す早いパッセージが続いても、乱れることなく、1音1音が明確で力強く、強靭でダイナミック。
それでいて、メンデルスゾーンらしい上品さと優雅さも漂っている。
聴いていて全く惚れ惚れするピアノである。
第1楽章は、メンデルスゾーンの指示 con fuoco(火のように、生き生きと。烈しく)どおり、情熱がほとばしるかのような勢いのあるピアノ。途中でゆったりとした叙情的な主題に変わるとピアノの表情もほっと一息つくかのように穏やかに。
それもつかの間でまた激情の世界に戻るが、第1~第3楽章までほぼ切れ目無く演奏されるので、トランペットらしきファンファーレを合図に、いつの間にかアンダンテの第2楽章に入っている。
ゼルキンの硬質でクリアな音色が、すがすがしい叙情感を漂わせていて、第1楽章が激情的だったせいか、よけいに美しく響く。
フィナーレの第3楽章。ここでも管楽器のファンファーレが冒頭に鳴り響き、続いて入るピアノはプロローグらしく華麗なアルペジオ。第1楽章で見せた緊迫感は消え、フィナーレにふさわしく明るく華やな旋律に変わる。
この楽章もアレグロで、第1楽章のように、ピアノが鍵盤上を目まぐるしく動き回るが、緊迫感が支配する第1楽章とは違って、メンデルスゾーンらしい優雅さと軽やかさが良く出ている。

オーマンディ指揮のフィラデルフィア管の伴奏は、カラフルな音色と軽快なリズム感、スピード感があり(派手と言えば派手な演奏だが)、カツァリスの伴奏をしていたマズア指揮のゲヴァントハウス管と聴き比べれば、その違いがよくわかる。
ゼルキンのピアニズムに合わせたドラマチックで華麗な伴奏をバックに、ゼルキンが楽しみながら生き生きとして弾いている姿が目に見えるよう。
ゼルキンのコンチェルトは、ベートーヴェンやブラームスで評価されているが、このメンデルスゾーンのコンチェルトは名演なのに、さほど話題にならないのが不思議。
メンデルスゾーンのピアノコンチェルト自体があまり知られていないせいもあるけれど、端正というよりはダイナミックでエネルギッシュなゼルキンのピアノが味わえる貴重な曲である。
それがメンデルスゾーンの曲で、というところが意外だけれど。

ゼルキンの演奏は第1番が素晴らしく、第2番の方も演奏自体は良いけれど、2曲とも曲想が似ているためか、ダイナミックな迫力に勝る第1番の方が印象に残る。
ゼルキンの12歳でのデビュー曲が、このメンデルスゾーンの協奏曲だった。
壮年期になっても第1番のコンチェルトを引き続けていたので、とても愛着のある曲だったのでしょう。

Mendelssohn: Piano Concertos Nos. 1 & 2; Violin ConcertoMendelssohn: Piano Concertos Nos. 1 & 2; Violin Concerto
(2002/01/30)
Felix Mendelssohn、

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このディスクには、スターンのヴァイオリンソロで、ヴァイオリン協奏曲もカップリングされている。
1000円もしない輸入盤の超廉価盤だけれど、内容は充実していてお買い得だと思う。

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