ヤナーチェク/ピアノ曲集 

2008, 11. 03 (Mon) 22:00

ヤナーチェクの音楽を初めて聴いたのは、20年くらい前に公開された映画『存在の耐えられない軽さ』。
ダニエル・デイ・ルイスとジュリエット・ビノシュが主演していて、「プラハの春」の頃のチェコを舞台にした映画。
原作はノーベル賞作家のミラン・クンデラ。翻訳本が集英社文庫から発売されている。

存在の耐えられない軽さ (集英社文庫)存在の耐えられない軽さ (集英社文庫)
(1998/11)
ミラン クンデラ

商品詳細を見る

存在の耐えられない軽さ存在の耐えられない軽さ
(2008/10/08)
ダニエル・デイ・ルイスジュリエット・ビノシュ

商品詳細を見る

                      

この映画では、チェコの作曲家であるヤナーチェクの音楽-管弦楽、弦楽曲、ピアノ曲がふんだんに使われていた。ビートルズの「ヘイジュード」も流れていた。
今思い出して見ると、この映画の内容よりも、流れていた曲の方を良く覚えているくらいに、音楽のイメージが強い映画だった。
音楽がとても気にいったので、サントラのカセットテープを買ってよく聴いたもの。
後にCD化されたけれど、随分昔の映画のサントラなので入手するのはかなり難しい。

存在の耐えられない軽さ存在の耐えられない軽さ
(1997/12/17)
ジェリー・グロスマンマルタ・クビショバー

商品詳細を見る

<収録曲>
1.おとぎばなしより3番
2.フリーデックの聖母マリア~ピアノ組曲「草かげの小径にて1」
3.霧の中でより2番
4.ヘイ・ジュード
5.ヨーイ,ヨーイ,ヨーイ
6.弦楽四重奏第2番「ないしょの手紙」より第4楽章
7.ヴァイオリン・ソナタ4番
8.病気の鳥はなかなか飛ばない~ピアノ組曲「草かげの小径にて2」より第4楽章
9.弦楽四重奏曲第1番「クロイツェル・ソナタ」より第3楽章
10.飛んでいった木の葉~ピアノ組曲「草かげの小径にて」より
11.おやすみ~同「同1」 12.弦楽のための牧歌5

                      

サントラが入手できなくても、ヤナーチェクのCDは数多く出ているので、それを聴けば映画の音楽以外にも、素敵な曲がたくさん見つかる。
代表的なピアノ曲は、《ピアノ・ソナタ 1905年10月1日街頭にて》、小品集《霧の中で》、《草かげの小径にて》(第1集/第2集)など。
ピアノ・ソナタは映画の中では使われておらず、もっぱら《草かげの小径にて》(第1集)の曲が使われていた。

定評のある録音は、フィルクスニーとアンスネスのCD。
アンスネス盤(1990年録音)には、《草かげの小径にて》第2集は収録されていない。
フィルクスニー盤(DG盤、1971年録音)では、《思い出》《主題と変奏(ズデンカ変奏曲)》が収録されているし、ピアノ協奏作品の《コンチェルティーノ》」《カプリッチョ》も入っている。
フィルクスニー盤(RCA盤、1989年録音)なピアノ独奏曲のみ。《思い出》《主題と変奏(ズデンカ変奏曲)》が入っていないのが残念。
ヤナーチェクのピアノ作品を、独奏曲と協奏曲まで含めて初期~晩年まで聴いてみたいなら、フィルクスニーのDG盤が良い。

フィルクスニーとアンスネスでは、同じ曲でも、演奏がかなり違う。
アンスネスのピアノの音は澄み切っていて、残響は長いが濁りがなく、とても綺麗。音色が硬質で、強弱のコントラストが強いので、ドラマティックに聴こえる。
透明感のある瑞々しさと、現代的なシャープさがある切れ味が鋭い。
これは、彼のデビュー時期の録音なので、いつもにもまして若々しく新鮮で鋭敏な感受性を感じる。

私が持っているフィルクスニーのRCA盤でも、代表的なピアノ曲がほぼ聴ける。
アンスネスの演奏に見られる鋭敏さはなく、しっとりした情感に溢れている。音色も澄んではいるが、まろやかで包み込むような暖かさがある。
アンスネスは、フレーズを明確に区切り、息を吸っては止めているような切迫感があった。
フィルクスニーは旋律が全体的にレガートでよどみなく流れ、気品と重厚さを感じる。
休止を入れるときも、ふっと息を抜くような自然な息遣いが感じられる。
フィルクスニーが77歳の時の録音だから、この落ち着きと自然さは経験がもたらしているのかもしれない。


ヤナーチェク:ピアノ曲集ヤナーチェク:ピアノ曲集
(2008/05/21)
フィルクスニー(ルドルフ)

試聴する


ヤナーチェクのピアノ曲は、透明感と叙情感の溢れた旋律が美しく、強弱というよりも濃淡のコントラストがとても強い。
旋律はチェコの民族的な雰囲気はするけれど、ピアノ独奏曲に限って言えば、洗練された旋律と和声なので、バルトークの強烈な民族性に彩られた音楽と比べれば、民族性や土俗性は希薄に感じる。

ヤナーチェクのピアノ曲でも、《ピアノ・ソナタ》は、ソナタらしく最も構造がしっかりしていて、技巧的にも他の曲集より難しく感じる。
ソナタは論文、それ以外は散文といった趣きで、ソナタは最も聴き応えがある。

ノルウェーの作曲家グリーグの叙情小曲集と比べると、両者とも透明感のある美しさがあるのは同じとしても、ヤナーチェクの場合は強い感情があちこちで噴出して、たとえ小曲といえどドラマティック。
特にソナタでは、主題部の激情をたたきつけるかのようなピアノの連打で目が覚まされる。

小曲で美しくドラマティックなのは「フリーデリックの聖母マリア」。教会の伽藍のような荘重さと同時に瑞々しく美しい叙情感もある。
「フリーデリックの聖母マリア」は《草かげの小径にて》第1集の曲。この曲集はいずれも標題がついていて、曲のイメージと音楽を連想しやすいし、主題も美しい旋律が多い。
この第1集は、ヤナーチェクの心が零れ落ちているかのように、いろいろな表情を見せる曲が集まっている。

タグ:ヤナーチェク フィルクスニー アンスネス

※右カラム中段の「タグリスト」でタグ検索できます。

0 Comments

Leave a comment