*All archives*



ブラームス/2つのラプソディ 第1曲 Op.79No.1
ブラームスのピアノ小品集はアンコールピースでよく弾かれる。
バラードの方は4曲あるので、リサイタルのプログラムやCDで演奏されるが(ミケランジェリやグールド)、「2つのラプソディ」(Op.79)も有名だと思うけれど、意外と録音が少ない。
ロ短調の第1曲、 ト短調の第2曲と2曲セットで出版されたが、片方だけ弾かれることも多く、どちらかというとより情熱的で弾き栄えのする第1曲の方がよく弾かれていると思う。
私は第1曲の方が絶対に名曲だと思っている。

20年以上も前から愛聴しているのはラドゥ・ルプー盤。
他にグールドとペライアの演奏したものも持っているが、探していたらバックハウスのCDまで持っていた。実際に聴くのはルプーの演奏がほとんど。
ブラームスらしい重厚さ、抑制されてもにじみ出る情熱、時折みせる優しげな情感を余すところ無く表現した名演だと思う。
このCDジャケットのルプーがなかなか良い。ちょっとむさ苦しいヘアスタイルと服が似合っていて、あまり売れない詩人ぽくって。
実際のルプーは、”千人の1人のリリシスト”と言われていて、昔はかなりの人気があった。
なぜかその後レコーディングを敬遠し今は新譜は全くリリースされていない。リサイタル活動は続けているようではあるが、ルプーを知る人がだんだん少なくなっているだろう。

Brahms: Two Rhapsodies, Op. 79; Piano Pieces, Opp. 117-119Brahms: Two Rhapsodies, Op. 79; Piano Pieces, Opp. 117-119
(1990/10/25)
Radu Lupu

商品詳細を見る


ルプーを久しぶりに聴くと、ブラームスらしい味わいが溢れていて、やはりこの盤に限る。
ホールでの録音のせいもあるだろうが、残響が長いためブラームスの厚い音の層で包み込まれるような心地がする。
AKGのヘッドフォンで聴くと特にそう感じるので、これが結構な快感である。
全体的にレガートで貫かれ、ルバートも多用しているが、リリシストの彼が弾くと全然不自然にも作為的にも感じない。
彼のフォルテはそれほど鋭くは打鍵されないので、ペライアほどにシャープな強さはないが響きが柔らかなので、曲の流れが断ち切られずにすむ。
左手の弾くパートは和音やアルペジオが多く、響きが長く大きくなるため右手高音部の主旋律を打ち消しがちなのだが、ルプーは音のバランスが非常に良く、低音が全体を威圧しないようにしている。
第1曲はロンド・ソナタ形式なので構造的には明解で、前後の主題に挟まれる展開部は、今までの激しさとは打って変わってとても穏やかで、美しい旋律に変わる。
ルプーの弾くピアノで聴くと、つかの間の安息に浸っているという感じがよく出ている。
ペライアだとまた違った味わいが出ていて、こういうゆったりと叙情豊かな旋律を弾くときは、ピアニストの感受性がストレートに映し出されるものだとよくわかる。
ルプーのピアノは、どんなに音が重なりあって激しく動きまわるところであっても、細部にわたって丁寧に表現されているが、ブラームスの音響的な層の厚さと重なりの中に音を溶け込ませているので、聴いていると音のうねりの中にいるような気がしてくる。
ルプーの演奏は、ブラームスらしい音楽をたっぷりと味わいたい人にはうってつけだと思う。

                             

昨日聴いたペライアのブラームスのピアノ四重奏曲のCD。このラプソディはアルバムの最終曲になっている。

Brahms/IntermezzoBrahms/Intermezzo
(2000/ / )
PerahiaQuator Amadeus
Murray Perahia
商品詳細を見る

ペライアの演奏はホールで録音しているはずなのに、スタジオ録音ような響きがして、残響の短いクリアで引き締まった音で弾かれている。
全体的に音色が明るく、和音の響きがあまり重くない。特に、左手の低音の粘りと響きが薄めで、ブラームスにしてはすっきりした感じがする。
テクニック的には、ルプー、グールドよりもしっかりしているので、ミスタッチや音の混濁がほとんどない。
フォルテとピアニシモのコントラストが明確で、ルプーより速いテンポで、ルパートもそれほどつけていないので、全体的に非常にシャープな演奏である。
ただ、時たま聴かせるスタッカート気味の音が、なぜか情感を欠いていて、”あっけらかん”とした音に聴こえるのが難点。
主題から一転して雰囲気が変わる展開部では、まるで夢を見るような純真さと何かへの憧憬や期待を感じさせるように弾いている。
この部分はペライア独特の優しさが出ていて凄く良い。

ペライアのブラームスは、ブラームス特有の粘りっこさや、抑制された感情がにじみ出てくる渋みみたいなものが希薄なので、洗練されたブラームスというところ。
テクニックも構成力もしっかりしているので、演奏としてはとても安心できるものだと思う。
ブラームス特有の重さや憂いが苦手な人だけれど、かといってグールドのようなノンレガートのブラームスはどうも.....と言う人には、ペライアのブラームスが良いかもしれない。


                             

グールド盤のブラームス小品集は、ルプー盤よりもはるかに売れ行きが良い。
最近でもセールスランキングの上位に入っているのをよく見かけた。
このブラームスは彼が亡くなる直前の録音。

ブラームス:4つのバラード、2つのラプソディ、間奏曲集ブラームス:4つのバラード、2つのラプソディ、間奏曲集
(2004/11/17)
グールド(グレン)

商品詳細を見る

相変わらずノンレガートが基本で、残響が短いが、そのせいで歯切れが凄く良い。
スタッカートで弾く部分ではその軽快なリズム感が意外に良く思えてくる。
展開部はテンポを全く落とさず、すごい速さで弾いていて、なんとも形容しがたいものがある。
それでも2回目に聴くと、何かが訪れるのを期待しているかのようなポジティブで明るくみずみずしい情感が溢れているように感じられるのが、なんとも不思議。

彼はブラームス特有の音の層を分解して、複数の旋律を同時に歌わせているように私には聴こえる。それぞれの旋律はノンレガートのわりには意外につながって流れていて、そういう点では音の流れがクリアに聴こえる。
全体的に、左手の低音部分の音が他よりも大きく聴こえるので、音の響きを短くする彼の弾き方では右手の高音部の響きが貧弱で、低音に打ち消されぎみのところが時々ある。

おきまりのブラームスではなく”斬新”な切り口で味わいたい人か、グールド大好きな人にはお勧め。
久しぶりにグールドの音楽を聴いたせいか、初めは全く良いとは思わなかったが、2回目に聴くと、こういうブラームスもあるんだろうと思い直した。
特に、主題が終わった後の展開部の演奏には摩訶不思議なところがある。
第1曲は、最初から最後まで速いテンポで一気に駆け抜けるかのように弾き、あっという間に曲が終わってしまった。
CDでは、この後に第2曲が続けて演奏されているが、これはわりとレガートで響きも長め。テンポもやや遅めでゆったりと弾いている。
重~い重いこの第2曲をグールドは淡々と弾いているが、それがかえって荘重な雰囲気を出している。
グールドの場合は第1曲と第2曲を続けて聴いた方が、タッチ、響き、表現がコロっと変化しているので、面白く聴けると思う。

tag : ブラームス ペライア ルプー グールド

※右カラム中段の「タグリスト」でタグ検索できます。
Secret
(非公開コメント受付中)

カレンダー
09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -
ブログ内検索
最近の記事
最近のコメント
カテゴリー
タグリスト
マウスホイールでスクロールします

月別アーカイブ

MONTHLY

記事 Title List

全ての記事を表示する

リンク (☆:相互リンク)
FC2カウンター
プロフィール

yoshimi

Author:yoshimi
<プロフィール>
クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

お知らせ
ブログ記事はリンクフリーです。ただし、無断コピー・転載はお断りいたします。/ブログ記事を引用される場合は、出典(ブログ名・記事URL)を記載していただきますようお願い致します。(事前・事後にご連絡いただく必要はありません)/スパム投稿や記事内容と関連性の薄い長文のコメント、挙動不審と思われるアクセス行為については、管理人の判断で削除・拒否いたします。/スパム対策のため一部ドメインからのコメント投稿ができません。あしからずご了承ください。