ペライア ~ バッハ/ゴールドベルク変奏曲 

2008, 10. 31 (Fri) 20:04

いつ買ったのかも全く記憶に無かったペライアのゴールドベルク変奏曲のCD。
ブラームスの室内楽のCDを探しているときに、ラックのCDの山の中から見つけた。
グールドを聴いても全然良いとは思えなかったこの曲が、ペライアの弾くピアノで聴くと全く違う曲に聴こえてきて、私にとっては全く素晴らしい演奏だった。
ペライアは一時、指の故障でピアノが弾けなくなり、コンサート活動も休止していた。
彼はその時にバッハ研究をひたすらしたらしく、これがこの時期の彼の心の支えとなったというのは有名な話。

ペライアは、指の故障からカムバックしてからは、バッハのイギリス組曲、ピアノ協奏曲、このゴールドベルク変奏曲、パルティータと、ひたすらバッハのピアノ曲を録音している。

バッハ:ゴールドベルク変奏曲バッハ:ゴールドベルク変奏曲
(2004/11/17)
ペライア(マレイ)

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ペライアのゴールドベルク変奏曲は、曲のすみずみにまで、ペライアの喜びが浸透している。
こんなにポジティブなゴールドベルクがあっていいのだろうかとさえ思えてくる。
彼は指の故障からカムバックしたときに、ピアノを弾くのが楽しくなったと言っていたという。
再びピアノを弾ける喜び、ピアニストであり続けられることへの感謝、そして弾くことを楽しむ気持ちが、この演奏に全て込められているに違いない。

彼の持ち前の明るくまろやかで深い響き、レガートで歌われる旋律は、グールドには全くないもの。
技術的に安定しているので、打鍵に曖昧さはなく、時には軽快で歯切れ良く、時には優しく、そして、ある時には堂々と力強くと、明快。
各声部は明確に弾きわけられて、それらが重なりあって響く和音の音色は豊かな響きだけれど、とても澄んでいる。
変奏ごとにテンポ、タッチ、表現などをはっきりと変化させ、よく練られているのに、技巧的な感じはしない。繊細だけれど、シフのような(脆さを感じさせる)線の細さはない。
豊かな情感と洗練された知的さとが均衡したバランスの良さが、ゆるぎない安定感につながっているのだと思う。
楽譜どおり全てリピート記号を守っているので、70分を超える演奏なのに、これが全然飽きません。ただし、グールドみたいな刺激的な演奏を求めている人には向いてないでしょう。
全体的に幸福感とポジティブな明るさに満ちているため、短調が支配する変奏や旋律特有の憂いや影の部分が薄く感じるのが、ほんのちょっと物足りない気はするけれど。(これは贅沢な悩み)

グールドのような斬新な解釈はないけれど、どういう音をどういう風に弾くべきかが彼の内面から自然に湧き出てくるかのよう。
休養中にバッハを丹念に研究したことで、バッハの音楽の演奏解釈に迷いがないのでしょう。
バッハの音楽を弾くにしては、やや感情に彩られすぎているのかもしれないけれど、何度もこの演奏を聴いていると、バッハの音楽を通して彼の心の喜びを語っているのかのように思えてくる演奏です。

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