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グールド ~ アルバン・ベルク/ピアノ・ソナタ
アルバン・ベルクの作品は、初期のものであれば、調性が崩れていても、ロマンティックな旋律、凝縮された冷たい美しさが交錯して、それほど現代音楽的な難解さは感じない。
グールドの弾くピアノ・ソナタや、ジェシー・ノーマンの歌う歌曲を聴くと特にそう感じる。
少なくとも、シェーンベルクやウェーベルンのピアノ曲とは違う種類の音楽に聴こえてくる。

このソナタの録音はあまりなかったけれど、最近は録音するピアニストも少し増えているかもしれない。
20年くらい前にFMで放送で初めて聴いて、あまりに美しい曲なので忘れることはなかった。それからずっと後に、グールドのCDを見つけた。
内田光子やポリーニも録音している。ポリーニは若い時からシェーンベルクやブーレーズ、ノーノなどの現代音楽を弾いていたけれど、ベルクの録音は聴いたことがない。ベルクの叙情性とポリーニのピアニズムとはイメージがあまり合わない気がするし。
試聴すると1992年の録音なので、音の響きが豊かな弾き方になっている。荘重な感じはするけれど、グールドのような磨ぎすまされた冷ややかな美しさを持ってはいないのかもしれない。
もし、ウェーベルンやシェーンベルクのピアノ曲を録音した1970年代に、ベルクを弾いていたら、この録音とは違った音楽になっていたに違いない。

ベルクのピアノ・ソナタが収録されているグールドのCD。
クルシェネク、ウェーベルンがカップリングされているのは理解できるとして、なぜかドビュッシーやラベルまで入っている。
クルシェネクは第1楽章はかなり面白いけど、4楽章全部を聴いていくと、だんだん面白くはなくなってしまう。

Glenn Gould Edition: Berg, Krenek, Webern, Debussy & RavelGlenn Gould Edition: Berg, Krenek, Webern, Debussy & Ravel
(1995/06/27)
James Campbell、

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ベルクのピアノ・ソナタロ短調(作品1)は、「四度音程の堆積からなる和音、半音階技法、全音音階の頻繁な多用によって、調性感は安定しない。
伝統的なソナタ形式の枠組みに従い、呈示部、展開部、再現部の三部分から成り立っている反面、ブラームス流およびシェーンベルク流の「発展的変奏の原理」に依拠することで、単一の楽想からすべての部分を派生させ、作品の統一感を確保している。」とWikipediaで解説されている。

確かに調性は安定していない。危なく調性が崩れそうになる手前で均衡を保っている感がする。
主題の旋律は明瞭で、調性が定まらなくても、美しい。怪しげな妖艶ささえ感じる。逆にこの調性の不安定さが、この旋律の美しさにつながっている。
形式上の主題の変奏や、高揚していくクライマックスへの展開も、ちゃんと聴き取れる。
クルシェネクのソナタより、はるかに分りやすい構成だし、感情的にシンクロしやすい曲だと思う。

グールドは、音の響きを最大限に切り詰め、夾雑物を一切排除したようなストイックな音で弾く。
このぎりぎりまで研ぎ澄まされた音の持つ緊張感が、この曲の持つ音の美しさに磨きをかけている。
グールドは、テンポやタッチも自在に変えており、このソナタの旋律と構造をこれだけ明確に、しかも、ロマンティックなほどに美しく聴かせることができるのは、グールドの解釈と弾き方がなせる技。
何度聴いても名曲だし、素晴らしい演奏。

グールドといえば、ゴールドベルク変奏曲。
旧録の方は、例えばロザリン・トゥレックのスローテンポで重いタッチの演奏(これは途中で聴くのをやめてしまった)と比較すれば、全く衝撃的。
今はグールドの演奏で初めてゴールドベルク変奏曲を聴く人が増えてしまって(グールドしか聴かない人もいるだろうし)、スタンダード化して衝撃も幾分薄れてしまったような気はするけれど。
グールドのゴルトベルクは全く好きではないのでリファレンスとして聴くだけで、好きで聴くのはベッカー、コロリオフなど。
ただし、1981年に再録したゴルトベルクの方は、凄みはなくなったけれど、演奏の流れが自然で、グールドのバッハでは珍しく何の違和感もなく普通に聴ける。
バッハと違って、グールドの弾くこのベルクのピアノ・ソナタは、何度聴いても新鮮さを感じるくらい、全く文句なく素晴らしく、この曲の私のスタンダード。

tag : グールド ベルク

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Author:yoshimi
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クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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