アルヴォ・ぺルト作品集 ~ アルヴォ・ペルトの世界 

2008, 11. 01 (Sat) 17:35

少し昔、アルヴォ・ぺルトの音楽が一時ブームになったことがある。グレツキがブームになった時期に近かったかもしれない。
リトアニアかどこかの合唱団が歌ったCDで初めて聞いて以来、ぺルトの曲のCDを集めてもう10枚以上たまってしまった。

彼の音楽の特徴は、シンプルな音の反復で構成された静謐な世界。時折切迫感のある激しくかき鳴らされる弦の音が、さらにその静けさを際立たせている。
合唱の世界はあまりなじめなかったが、管弦楽や室内楽の曲は、現代音楽とはいえ調性が安定していて、研ぎ澄まされた静謐さの中で、繰り返し流れる美しく透明感のある旋律である。
極めて単純な旋律が繰り返されるぺルトの音楽は、一度聴くとなかなか忘れられない不思議さがある。

彼の器楽曲のもっとも有名なCDは、ヴァイオリンのギドン・クレーメル、ピアノのキース・ジャレットが参加している「タブラ・ラサ」。
現代物に定評のあるECMからリリースされている。そういえば、キースのジャズのCDもECMだった。

アルヴォ・ペルトの世界~タブラ・ラサアルヴォ・ペルトの世界~タブラ・ラサ
(2008/10/08)
デイヴィス(デニス・ラッセル)

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このCDには、「フラトレス」のピアノ・ヴァイオリン版とチェロ合奏版、ベンジャミン・ブリテンへの追悼歌、タブラ・ラサの4曲が収録されている。
いずれの曲も外形的な派手さは全くなく、同じ旋律が繰り返し演奏されるが、非常に強い緊張感に覆われている。

「フラトレス」のピアノはキース・ジャレット。彼はバッハの平均律曲集もリリースしているし、自宅ではクラシックをよく弾いていると言う。
ケルン・コンサートなどの彼の代表的なソロピアノ作品を聴けば、彼がぺルトのような現代音楽に対して、親和性が高いのだと思う。
クレーメルのヴァイオリンも、厳しく研ぎ澄まされた音色で、他のヴァイオリニストで聴いたこの曲の演奏よりも、はるかに緊張感を伴った怜悧な演奏だった。

「ベンジャミン・ブリテンへの追悼歌」は、亡くなった作曲家ブリテンの思い出に捧げたもの。弦楽器だけが、旋律にならないような旋律をひたすら繰り返してかき鳴らす曲だが、厳粛で哀切な感情が漂っている。

「タブラ・ラサ」は彼の代表作の1つ。シュニトケがプリペアード・ピアノを弾いている。

シンプルな旋律の反復と多層的な音の響き、淡々と徐々に迫ってくるクライマックス。
これが現代音楽とは思えないほどの美しさと緊迫感に支配された音楽を作り出している。

このぺルトの音楽は難解だとは思わないが、やはり古典・近代音楽とは異種の音楽である。
もっとわかりやすいメロディアスな曲が良いなら、ぺルトの室内楽曲がコンパクトにまとまったCDがEMIからリリースされている。
ピアノはMartin Roscoe、ヴァイオリンはTasmin Littleだが、両者とも知らない演奏家。

Arvo Pärt: Fratres, etc.Arvo Pärt: Fratres, etc.
(2002/10/29)
Arvo Part、

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非常に有名な曲が収録されていて、ぺルトの管弦楽と室内楽がどんな音楽かがよくわかる。

1. Frates (1980 Version) (For Violin And Piano)
2. Cantus In Memoriam Benjamin Britten (For String Orchestra And Bell)
3. Summa (For Sting Orchestra)
4. Spiegel Im Spiegel (For Violin And Piano)
5. Festina Lente (For String Orchestra And Harp)
6. Tabula Tasa (For Two Violins,Strings Orchestra and Prepared Piano)
   Ludus (With Movement)
   Silentium (Without Movement)

ECM盤と同じ曲も収録されているが、全体的にECM盤のような厳しく重苦しい緊迫感は薄く、流麗な旋律の流れや叙情性の方が強い。
現代音楽になじみのない人は、このEMI盤の方が聴きやすいと思う。

全曲、弦楽で演奏されているが、ピアノが入っているのは、「Spiegel Im Spiegel」。
「鏡の中の鏡」というミヒャエル・エンデの著作を思い出す曲名だが、たぶん関連性はない。
この「Spiegel Im Spiegel」は、曲順では中央の4番目に置かれているが、まるでこのアルバムの清涼剤のような音楽である。
ピアノの単純な音を伴奏に、弦がゆったりと主題を奏でていくが、透明感のあるピアノの音が可愛らしい。まるで、童心にかえったかのような無垢な純真さを感じさせる。

「Festina Lente」は、弦楽器の奏でる哀愁のある旋律が美しく、悲痛感を漂わせている。

このアルバムのどの曲をとっても、音の配列は単純ではあるが多層になって響く旋律の美しさは、現代作曲家の音楽にしては異端的といってもいいかもしれない。
ぺルトはエストニア出身。この音楽が無性に聴きたくなるのは、厳しい寒さの冬の静かな夜。
氷に覆われた世界で、ひたすら自分の内面の深くに沈潜して、何かを探し求めているかのような音楽だからだろう。

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