*All archives*



アラウ ~ シューベルト/ピアノ・ソナタ第20番
アラウはシューベルトのピアノ・ソナタをほとんど録音していない。後期ピアノ・ソナタ3曲の録音は、アラウが70歳後半に録音している。
最近、アラウのシューベルトの録音は技術的にかなり問題があるというブログの記事を読んで、そうだったかな?と思って、後期ピアノ・ソナタの録音を聴き直してみた。
昔はそういうことはあまり気にしていなかったというか、技術的にどうかという視点で注意して聴いていなかったので、改めて、タッチとか音の粒とか、指のコントロールが安定しているかどうかに注意して聴いてみると、やっぱり指摘の通り、かなり技術的な衰えが見えてしまう。
それに、ペダリングのせいか、エコー処理がかかっているかで、残響が長くて音響的にすっきりしないところもある。

さすがに88歳頃に録音したファイナル・セッションの曲は、技術的にはもう完全に衰えてしまっているので、それをわかって聴いているけれど、まだ70歳半ばでこれだけテクニックが衰えていたというのは、ちょっとショック。
技術だけで弾くものではないとはいえ、それを無視して聴けるものでもない。
でも、そういう欠点はいろいろ感じてしまうけれど、それでもアラウの持ち前のおおらかな包容力のある表現は健在で、後期ソナタの中でも明るさの支配する20番ソナタにとても似合っている。

結局、聴き直してみたところで、アラウのこの20番のソナタと即興曲が好きなのは以前と変わることもなく。
アラウのベートーヴェンの新盤のピアノ・ソナタ全集でも同じことだけれど、高齢ゆえの技巧的な問題はなぜか忘れて、聴き入ってしまう。技巧が安定した演奏がよければ、ほかのピアニストの録音で聴けば良いことだし。

繊細なシューベルトを弾くピアニストは多いけれど、アラウのシューベルトとは、叙情豊かに歌ってはいても、感傷や線の細さはなくて、幸福感と安心感に満ちた穏やかさと暖かさが満ちて懐の深さが心地良い。

第1楽章の冒頭を主題を弾く低音の響きがとても堂々として、安定感がある。
それにしても、主題が転調・変奏され、その間にいろんなモチーフも挿入されるので、いかにもシューベルトらしい長々とした展開で、やはりその長さが気にはなるけれど。

第2楽章は、他の楽章とは異なって、この楽章だけが暗い翳りに彩られている。アラウは、わずかに拍子をずらしながらポツンポツンと本当に頼りなげに弾いている。
悲愴感を強調することはせず、左手の低音をボーンボーンを通奏低音のように静かに響かせて、高音の透き通った音色と対象的で、抑制された悲しみがにじみ出るよう。

第3楽章は、次の第4楽章への展開を予告しているみたいに、第2楽章とは打って変わって、明るく軽やかな主題に変わる。

第4楽章の主題はこのソナタでは最も美しく明るさのある旋律。この楽章は美しい旋律で彩られて、シューベルトの歌心が溢れているかのよう。
アラウの深く豊かな響きと暖かみのある音色が美しく、波のようにうねりのあるレガートで歌うようなピアノ。
曲の隅ずみにまで音色や響きに細かやに気遣いをしているが、それ以上に大きなスケール感と奥深い包容力で幸福感を感じさせる。

アラウのベートーヴェンの第4コンチェルトは、深い慈愛と包容力を感じさせてくれるけれど、明るさのなかに影が潜むこのピアノ・ソナタも同じ。
カップリングされている即興曲もとても美しい演奏。
低音の太く深い響きと、高音のピアノの伸びやかで透明感のある響きのコントラストが鮮やかで、まるで夢を見ているかのような流麗な旋律が流れている。

わずかに後期ソナタ3曲を含む5曲の録音が残っているが、後期ソナタ3曲と即興曲をカップリングしたこのCDが一番コストパフォーマンスが良く、入手しやすい盤。

Schubert: The Late Sonatas & Impromptus [Germany]Schubert: The Late Sonatas & Impromptus [Germany]
(2003/05/07)
Claudio Arrau

試聴する(英国amazon)


後期ピアノ・ソナタ3曲の録音のなかで、一番良いと思える第20番と即興曲をカップリングした分売盤。
シューベルト:Pソナタ第20番シューベルト:Pソナタ第20番
(2001/08/29)
アラウ(クラウディオ)

試聴する

tag : アラウ シューベルト

※右カラム中段の「タグリスト」でタグ検索できます。
Secret
(非公開コメント受付中)

カレンダー
09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -
ブログ内検索
最近の記事
最近のコメント
カテゴリー
タグリスト
マウスホイールでスクロールします

月別アーカイブ

MONTHLY

記事 Title List

全ての記事を表示する

リンク (☆:相互リンク)
FC2カウンター
プロフィール

yoshimi

Author:yoshimi
<プロフィール>
クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

お知らせ
ブログ記事はリンクフリーです。ただし、無断コピー・転載はお断りいたします。/ブログ記事を引用される場合は、出典(ブログ名・記事URL)を記載していただきますようお願い致します。(事前・事後にご連絡いただく必要はありません)/スパム投稿や記事内容と関連性の薄い長文のコメント、挙動不審と思われるアクセス行為については、管理人の判断で削除・拒否いたします。/スパム対策のため一部ドメインからのコメント投稿ができません。あしからずご了承ください。