吉松隆/サイバーバード協奏曲 

2008, 11. 08 (Sat) 09:17

管楽器の音は苦手で、トランペット協奏曲とかホルン協奏曲はまず聴くことがない。
ジャズでも、ピアノトリオは大好きでCDもかなり集めてはいるけれど、サクソフォーンやトランペットが入ってくるカルテットやクインテットはまず聴かない。
唯一の例外は、コルトレーンとエリック・アレキサンダーのサックス。
コルトレーンは初期から中期くらいまでしか聴いていないけれど、バラード集とか、デューク・ウエリントンとのデュオはとても聴きやすい。
エリック・アレキサンダーは、きりっとした音色で切れの良い都会的な雰囲気があって、彼のサックスだけは、なぜか楽しく聴けてしまう。

吉松隆の代表作の一つであるサクソフォーン協奏曲「サイバーバード協奏曲」。
これは、アルト・サクソフォーンとオーケストラの協奏曲で、日本でサクソフォーンの第一人者と言われる須川展也による委嘱作。
クラシックとは言え、モダンジャズを極めて上品に仕上げたテイストも感じられ、ジャズの好みが広めの人なら抵抗無く聴ける曲である。
反対にクラシックと思って聴いた人は、失望するかもしれない。

<吉松隆がつけた標題>
第1楽章:彩の鳥(Bird in Colors)。様々な色彩の断層をすり抜けて飛ぶ、いくぶん錯乱したアレグロ。
第2楽章:悲の鳥(Bird in Grief)。悲しみの鳥の独白と、その横で夢を紡ぐように歌う鳥たちのアンダンテ。
第3楽章:風の鳥(Bird in the Wind)。風に乗ってひたすら一直線に飛翔するプレスト。

第1楽章、第3楽章ともリズム感とスピード感があり、サクソフォーンの音色がよく映えている。
高音から低音まで激しく動き回るサックスはかなりの技術を要求されるらしい(私にはよくわからないけれど)。
第2楽章は、これほど美しい曲を書ける現代音楽作曲家はいないであろうと思わせる曲。サクソフォーンの音色が、これほどにまでに哀感をたたえられるものかと思うくらい美しい。

この曲は、吉松隆の2歳年下の妹の病床の傍らで作曲したというのは有名な話である。彼女はこの曲の初演を聴くことなく、この世を去ったという。
作曲者がつけた第2楽章の標題は「悲しみの鳥の独白と、その横で夢を紡ぐように歌う鳥たちのアンダンテ」。
早くして亡くなった妹への想いを込めて作られた曲なのだろう。「「今度生まれてくる時は鳥がいい」と言って死んでいった妹の名を第二楽章に刻印した。」と吉松は書いている。
悲しみと安らぎが交錯する不思議な雰囲気の曲である。
サクソフォーンの穏やかで伸びやかな少し低めの音色が切々と悲しみを歌い、管楽器たちが鳥たちのアンダンテを歌っている。
時おりピアノが刻む音がどこか悲しげだが、一抹の安らぎを感じる響きでもある。
この第2楽章の美しさは格別だが、そこに作曲者が込めた想いを考えると、言葉では表現できないものがある。

Yoshimatsu: Symphony No. 3 / Saxophone ConcertoYoshimatsu: Symphony No. 3 / Saxophone Concerto
(1999/07/20)
Takashi Yoshimatsu、

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