*All archives*



ポリーニ ~ ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ第32番
ベートーヴェンの最後のソナタで、良い演奏が残っていないかと思って、ポリーニの後期ソナタ集を久しぶりに聴くと、実に鮮やかな演奏だった。
ミケランジェリの1960年頃のライブ録音(BBC LEGENDS)も良いが、ポリーニの演奏もそれに劣らず良い。

Beethoven:The Late Piano SonatasBeethoven:The Late Piano Sonatas
(1997/08/12)
Maurizio Pollini

商品詳細を見る

第1楽章、冒頭の序奏の和音とアルペジオは、鋭い打鍵でフォルテの重苦しい響きで始まる。主題部では、弾力のある力強い打鍵と大音量で、スピード感と重厚さは十分。追い込むような切迫感で一気に弾ききっている。こういうところは本当にポリーニらしい強靭さがある。
合間にアダージョやアンダンテの静かに落ち着いたモチーフが出てくるが、そのコントラストがとても鮮やか。

第2楽章。一転して静かなアリエッタに入るが、ポリーニはあまりペダルを使わず、シンプルな音色と響きで淡々と、1音1音をかみしめるようにゆっくりと弾いている。
ポリーニのこの弾き方は、意外と静かに控えめではあるが強い叙情感を感じる。
変奏に入ると、徐々に覚醒するかのようにテンポを少し上げて、歌にも生気が感じられるようになる。
ポリーニは幅広い強弱のコントロールに加え、テンポを変化させるところが上手い。

第2変奏はとても軽やか。リズム感も良く、可愛らしくはあるが、甘ったるくはない。
(ミケランジェリは、ここをとても甘い妖艶な音で弾いていた。)
第3変奏で、両手のアルペジオが、高速で高音から低音を行き来するところは、フォルテであっても、符点のリズムは明確で崩れることはなく、躍動感と喜びに溢れている。

最終変奏もテンポを速くとり、主旋律が途切れず流れるように聴こえてくる。
ピアニシモは非常に小さい音量に落としているが、テンポは速くなっても、細部まで明瞭に響かせている。
似たような変奏が展開されるが、音量、テンポ、タッチを明確に変えているので、変奏の表情の変わる様子がよくわかるように弾いている。
終盤へ向けてリズミカルでテンポも速く高揚感はあるが、ミケランジェリの演奏に比べるとあっさりと終わるので、高揚感が若干薄いかもしれない。

ポリーニは、テンポの速さや、音量の大小にかかわらず、打鍵やリズムが崩れず正確で、技術的には全く何の問題も難しさも感じさせない。この頃のポリーニは構造的な安定感が抜群だった。
今のポリーニは音の響きを重視しオーバーペダリング気味だが、この曲ではペダルを効果的に使って響きが濁らないようにコントロールしていて、とても見通しの良いすっきりとした音響空間である。
技術が完璧なだけで終わるのではなく、ポリーニなりの叙情的な表現が溢れていて、久しぶりにポリーニを聴いてみると、それがとても新鮮に聴こえる。

ミケランジェリのライブ録音の演奏も素晴らしいが、全体的にルバートやアゴギーグをよくつけたクセのある演奏なので、ポリーニの方が生真面目な誠実さがある。
両者とも、抜群に切れ味の良い刀でスパっと鮮やかに切ってみせたような感があるので、ベートーヴェンの奥深い精神性とか深々とした味わいといったものを求めている人には、あまり向いていない演奏かもしれない。

tag : ベートーヴェン ポリーニ

※右カラム中段の「タグリスト」でタグ検索できます。
Secret
(非公開コメント受付中)

カレンダー
09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -
ブログ内検索
最近の記事
最近のコメント
カテゴリー
タグリスト
マウスホイールでスクロールします

月別アーカイブ

MONTHLY

記事 Title List

全ての記事を表示する

リンク (☆:相互リンク)
FC2カウンター
プロフィール

yoshimi

Author:yoshimi
<プロフィール>
クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

お知らせ
ブログ記事はリンクフリーです。ただし、無断コピー・転載はお断りいたします。/ブログ記事を引用される場合は、出典(ブログ名・記事URL)を記載していただきますようお願い致します。(事前・事後にご連絡いただく必要はありません)/スパム投稿や記事内容と関連性の薄い長文のコメント、挙動不審と思われるアクセス行為については、管理人の判断で削除・拒否いたします。/スパム対策のため一部ドメインからのコメント投稿ができません。あしからずご了承ください。