ジェシー・ノーマン ~ アルバン・ベルク/7つの初期の歌 

2008, 11. 29 (Sat) 13:14

アルバン・ベルクの代表的な作品の中でロマンティシズムに溢れているのが、唯一のピアノ・ソナタとこの「7つの初期の歌」。
後年のような12音技法による歌曲ではなく、後期ロマン主義の影響を強く受けているので、いくつか現代音楽を聴いたことがあれば、抵抗なく聴ける(と思われる)曲集。

私の持っているCDは、ジェシー・ノーマン&ブーレーズ指揮ロンドン交響楽団盤。
ジャケットデザインがとても印象的で、真紅のバックに純白のドレスを纏ったノーマンの写真が美しい。
カップリングは、「アルテンベルク歌曲集」、「若き日の歌」、「2つの歌」と代表的歌曲が収録されている。
「若き日の歌」はあまり知られていない初期の作品らしく、これがベルクの作品かと思われるくらい、調性の安定したロマン主義的な曲。
その後のベルクの作風を予感することなどできないくらい美しい旋律に溢れている。
特に美しさと激情が交錯するロマンティックな曲「Liebe」と「Mignon」は、「初期の7つの歌」を予期させる。

Jessye Norman Sings Alban BergJessye Norman Sings Alban Berg
(1995/03/07)
Jessye Norman, Pierre Boulez

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夜 Nacht(詩:カール・ハウプトマン)
歌詞を見ながら伴奏を聴くと、詩のイメージが良くわいてくる曲。
雲と霧に覆われた夜の谷間が晴れ渡って、銀色の山々や道、木々が浮かび上がり、明かりが見えてくる。夜の暗い帳の孤独から解放されていく喜びが歌われている。

葦の歌 Schilflied(詩:ニコラウス・レーナウ)
深い葦が茂る川岸を歩きながら、恋人を想う詩。

夜鳴きうぐいす Die Nachtigall(詩:テオドール・シュトルム)
夜鳴きうぐいす(ナイチンゲール)の美しい鳴き声と、少女から大人へと成長しつつある恋人(らしき女性)想う心情がからみあって、幻想的で激しい叙情が溢れ出す曲。
ノーマンは豊かな声量と伸びやかな声で、抑揚を大胆につけていて、いつもながらドラマティックな表現力は抜群。
ノーマンはこの曲を好んでいるようで、この曲集中、唯一欧州でのリサイタルでピアノ伴奏で歌っていた曲。
オーケストラ伴奏がやや控えめなのかもしれないが、ノーマンの歌声が際立って鮮やか。

夢に見た栄光 Traumgekrönt(詩:ライナー・マリア・リルケ)
夢にまでみた女性との想いが叶った喜びを詠った詩。まとわり搗くようなねっとりとした情感のある曲。

室内にて Im Zimmer(詩:ヨハネス・シュラーフ)
秋の夕暮れに、暖かいストーブの傍らでまどろむ恋人たちの詩。歌詞どおりとても愛らしく優しい小曲。

愛の賛歌 Liebesode(詩:オットー・エーリヒ・ハルトレーベン)
夜の月明かりや庭の薔薇の香りに彩られた濃密な愛を歌う詩にあわせて、これもねっとりとした情感のある曲。

夏の日 Sommertage(詩:パウル・ホーエンベルク)
夏を詠った詩かと思ったら、英訳を読むとどうも神様のことを讃えているような詩。
心が叫んでいるかのような勢いがあり、最後は決然とした賛歌で終わっている。

7曲を順番に聴いていると、1つのストーリーになった連作歌曲のような気もしてくる。
「室内にて」は他の曲とは曲想がかなり違っていて、息がつまるような濃密な情感や激情が漂う曲が多い曲集中では、清涼剤のような爽やかさと、ほっと一息つけるような安かさがある。
オーケストラ伴奏は、後年のアルテンベルク歌曲集に比べて、起伏が穏やかで流麗で濃密な弦の響きが美しい。
ノーマンは、まとわりつくような濃密な情感や噴きだす激情から、幻想的な自然の情景まで、表情豊かに歌い上げていて、その曲の持つイメージや雰囲気を鮮やかにイメージさせる。
特に、ベルク独特の濃密さを表現するには、ノーマンのやや濁りと粘りのある声が向いているのかもしれない。
いつ聴いても、ノーマンの歌には魔力的な不思議な魅力を感じてしまう。




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