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アラウ ~ ブラームス/ピアノ協奏曲第1番
クラウディオ・アラウはブラームスのピアノ協奏曲をとても得意としていて、コンサートでも良く弾いていた。
スタジオ録音は第1番と第2番とも2種(ジュリーニ指揮/フィルハーモニア管/1960年・62年、ハイティング指揮ロイヤル・コンセルトヘボウ管/1969年)残っていて、いずれも頻繁にあちこちで取り上げられている名演。
このほかにライブ録音がかなり残っているが、第1番か第2番のどちらかを演奏(録音)していることが多い。

ジュリーニ指揮フィルハーモニア管盤。第1番と第2番のピアノ協奏曲に加え、「悲劇的序曲」と「ハイドンの主題による変奏曲」がカップリングされている。
アラウのCDはBOXセットに統合されて、廃盤になっているものが多いのに、この盤はまだ健在。やはり名演とされるだけのことはある。
1960年の録音で古いとはいえ、EMIだけあって、ステレオのスタジオ録音のわりに音がこもり気味なのが残念。
音がクリアなら、もう少し白熱感があったのかもしれない気もする。

Brahms: Les 2 Concertos pour pianoBrahms: Les 2 Concertos pour piano
(1998/03/24)
クラウディオ・アラウ、カルロ・マリア・ジュリーニ指揮フィルハーモニア管弦楽団

試聴する (別の輸入盤のダウンロードサイトにリンク)


ハイティンク指揮ロイヤル・コンセルトヘボウ管の伴奏による第1番と第2番のピアノ協奏曲に加え、「悲劇的序曲」と「大学祝典序曲」、「ハイドンの主題による変奏曲」がカップリングされている。
今ではおそらく廃盤。今はアラウのブラームスBOXセットに、ピアノ独奏曲とまとめて収録されている。
音質はかなり良く、Philips盤で聴くアラウの演奏は、どのCDでも音がとても綺麗に響いている。

Brahms: Piano Concerto in Bf No2, Op83; Piano Concerto in Dm No1, Op15Brahms: Piano Concerto in Bf No2, Op83; Piano Concerto in Dm No1, Op15
(1993/08/10)
クラウディオ・アラウ、ベルナルト・ハイティンク指揮ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団

試聴する (別の国内盤にリンク)


                              

「ピアニストとのひととき」(デイヴィッド・デュバル著)という本でインタビュに答えていたが、アラウは、レコーディングは作品に対する自分自身の演奏法の記録であって、若いピアニストにも参考になるだろうし、何よりも演奏家として生き続ける手段だと考えていた。
たしかに、何度も録音している曲も少なくない。ベートーヴェンのピアノ・ソナタ全集は2回(2回目は「月光ソナタ」と「ハンマークラヴィーア」だけが未録)、ベートーヴェンのコンチェルト集は2回、ブラームス・シューマン・グリーグのピアノコンチェルトも数回録音している。
1950年代より昔の録音を入れるともっと多いかもしれない。

アラウの場合は、レコーディングにはそれ自体の約束ごとがあるので、ステージでの演奏活動とレコーディングでの演奏は同じものではないと考えていた。そのためか、ライブ録音にはあまり積極的ではなかったらしい。
彼はレコーディング自体を楽しんでいて、プレイバックを聴くと新しいアイディアが浮かんでくると言っている。
88歳で亡くなる直前までレコーディングをしていたくらいだから、とてもレコーディングが好きだったのだろう。
ピアニストの中川和義さんという人が、”アラウは、「録音」専門のグールド?と違い、「録音も巧い!」、本来のステージ演奏家”と評していたくらいに、アラウの録音では完成度の高い安定した演奏が聴ける。

                              

ライブ録音で第1番と第2番の両方が残っているのは、 指揮北ドイツ放送交響楽団との演奏で、1966年と1963年のコンサートを収録したもの。シュミット=イッセルシュテットのライブシリーズの一環でリリースされている。
モノラル録音のライブなので、オケの響きが痩せているのが難点だが、ピアノの音色の方はわりとクリア。

ブラームス:ピアノ協奏曲第1&2番 アラウ(P)、S=イッセルシュテットブラームス:ピアノ協奏曲第1&2番 クラウディオ・アラウ、ハンス・シュミット=イッセルシュテット指揮北ドイツ放送交響楽団
(2004/04/17)

アラウのスタジオ録音の方は、いずれも質的に安定していてキズのない優れた演奏ではあるけれど、どちらかという堅実で落ち着いた印象がある。
アラウのライブは、スタジオ録音とは別人のように、エネルギッシュに感情移入も激しい弾き方をするとよく言われているが、さすがに評判どおり。

第1番のコンチェルトは1966年(アラウが63歳、イッセルシュテットは66歳)の演奏。
スタジオ録音よりはテンポが速いので、演奏時間は2分ほど短い。
第1楽章はそれほどテンポは速くはないが、冒頭から、力強く陰影のある総奏で始まり、アラウのピアノも力強く鋭さのあるタッチで、スタジオ録音とは違って、陰影が強く感情が揺れ動くような表現。明るさも柔らかさも全くなく、ブラームスらしい力感とほの暗さが漂っている。
スタジオ録音で聴くアラウの音はとても響きが深くてとても美しいが、モノラルのライブ録音で音が悪いとはいえ、アラウの弾く音はやはり深みのある響きがする。

第2楽章は曲想としては穏やかだけれど、ここもピアノが強めのタッチで哀感を朗々と歌っている。
第3楽章は冒頭のピアノがかなり速いテンポで走っていて、オケを追い越してしまいそう。
ピアノの力強くて太い響きのフォルテがよくきいているが、細かいパッセージはとても歯切れ良く踊るように軽やか。
ところどころたっぷりとしたルパートやテヌートをかけて、表現はかなり濃いめだけれど、演奏に躍動感があるので、しつこい感じが全然しない。
止まるに止まれぬ勢いと熱気が伝わってくる。

このライブでアラウが弾くブラームスは、とても力強くてロマンティック。
第3楽章の白熱感とスピード感は、スタジオ録音のアラウでは聴けない。
気合が入って力強さと重みが増しているのに、テンポはだんだん速くなるし、感情の表現の起伏も大きいし、スタジオ録音とは別人に豹変している。
というか、こっちが本領だと思う。この録音に限らず、ライブだとこういう演奏になるらしい。
感情とエネルギーを開放させて、生き生きとしたピアノを弾いているのが良くわかって、ライブでしか聴けない演奏の録音というのは本当に貴重。

                              

スタジオ録音の方は、ライブとは全然雰囲気の違う演奏になっている。
ジュリーニ/フィルハーモニア管盤は、ゆったりとしたテンポで(演奏時間は51分を超える。だいたい47~48分くらいが多い)、ピアノもオケも優美で滑らかさがあり悠々とした広がりのある演奏。感情がせめぎあう怒涛のような荒々しさは希薄。
第3楽章はさすがにテンポが上がってはいるけれど、力感やスピード感を強調することはせず、優美さの漂うロマンティックな演奏。
テンポの遅さで有名な指揮者とピアニストなので、かえって相性が良かったのかも。
アラウのピアノは落ち着きのある安定感と柔らかく優しげな雰囲気が感じられて、ピアノが良く歌っている。
幹が結構太くてしっかりしていて枝葉も良く茂り、葉の葉脈までくっきりと見えるような、細部まで表情の豊かなピアノ。
このスローペースで50分以上飽きることなくしっかり聴かせるのだから、やっぱりこの演奏は凄い。

この10年後に録音した若き(といっても40歳だけど)ハイティング指揮ロイヤル・コンセルトヘボウ管盤だと、66歳のアラウのピアノはとても堂々としたもの。
ハイティングの指揮はアラウのピアノに寄り添っていて、とよく言われているが、コンセルトヘボウの音が線がやや細くてとてもまろやかなので、アラウのピアノの方が目立っているような..。
この録音は音質が良くて、オケもピアノも響きが伸びやかでとても綺麗な音がする。

同じピアニストが弾いた同じ曲でも、指揮者とオケの違いと、ライブかスタジオ録音の違いで、個性の違った演奏になって、聴き比べてみるととても面白い。
若い頃のカッチェンとハフの力強くて若々しい激情を感じさせるブラームスの第1番のコンッチェルトはかなり良いと思ったけれど、60歳前後のアラウが弾いた演奏を3種類とも聴きなおしてみると、アラウのブラームスは重みのある安定感と深みがあって素晴らしい。

tag : アラウ ブラームス ジュリーニ

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yoshimi

Author:yoshimi
<プロフィール>
クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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