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ナタリー・シュトゥッツマン ~ 夢のあとに/フォーレ歌曲集
デビュー間もないシュトゥッツマンの『夢のあとで~フォーレ歌曲集』がたまたまTOWERRECORDの試聴盤になっていたので、聴いてみるとこれきりっとした潔さと彫りの深い表情が素晴らしく、典雅な気品のあるフォーレ。
たぶん、このCDがシュトゥッツマンのデビュー盤だったと思う。
ジャケット写真はフランス風の洒落た雰囲気がよく出ていて、黒い帽子とスーツに身をつつんだシュトゥッツマンがとってもシックな雰囲気。シュトゥッツマンの歌自体も好きなので、これは今まで買った歌手のCDの中でも、特に好きなものの一つ。

夢のあとで~フォーレ歌曲集夢のあとで~フォーレ歌曲集
(2007/11/07)
シュトゥッツマン(ナタリー)

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ジャケットの美しさもさることながら、シュトゥッツマンの歌うフォーレはとても素敵。
彼女の声は太く硬いけれど、声自体に張りがあって、硬い艶かさもほのかに漂っている。
アルトにしては深い響きがするので、曲の陰影がとても鮮やかに描き出される。
フォーレの旋律はどの曲もとても美しい旋律で上品さを感じるが、シュトゥッツマンが歌うと凛とした気品という薫りが湧き立ってくるかのような感じがする。

シュトゥッツマンは、この後もフランス歌曲やブラームス、シューベルト、シューマンなどを次々と録音している。
いろいろ聴いてみると、シュトゥッツマンがフランス歌曲を歌うと、どこかした都会的な洗練した香りと典雅な気品があるので、彼女の声質はフランス近代ものがとても似合っている気がする。

長調の曲は明るさ、愛らしさ、躍動感があるが、シュトゥッツマンの声だと、それがあからさまではないやや抑制されたところがあるので、品の良さを感じさせる。
短調の曲は内面をじくじくと歌うような曲ではなく、切々と訴えるような浪々とした旋律の曲。
シュトゥッツマンが歌うと、感傷には流されず、陰影のある彫りの深さが良くでていて、心の奥深くから情感があふれ出てくるような印象。

この曲集は、はじめの10曲の旋律が特に印象的。
それぞれ雰囲気の違う長調・短調の曲が上手く並べられているので、いろいろ変化があるし、好きな歌が多くて、結局、いつも初めの10曲を集中して聴いているような気がする。

「蝶と花」は冒頭を飾るにふさわしい心が弾むような軽やかさ。
「5月」は少し落ち着いてきて、流れるようなレガート。
「漁師の歌(哀歌)」は、冒頭は抑制された哀感が漂っているが、徐々に感情が高ぶって浪々とした歌になっていくドラマティックな曲。彫りの深い陰影に富んだ表現がこの曲に良く映えている。
「愛の夢」は穏やかな曲想の歌だけれど、リピートの度に歌い方を少しずつ変えていて、雰囲気がそれぞれ違って聴こえるところが面白い。
「悲しみ」は朗々と歌われる短調の曲。フォーレの短調の曲は旋律は哀感があるけれど、暗さは全くない。
「夢のあとに」は、シュトゥッツマンの声がなぜかほのかな暖かみさえ感じる哀感に満ちている。格調高い気品に溢れた歌声がとても素敵。
「河のほとりで」は短調の曲だけれど、淡々とした曲想なので暗い感じはしない。
「ネル」は一転して躍動感のある曲。「秋」は前半部の終曲で、またしても短調の曲。

Fauré - Après un rêve - Nathalie Stutzmann


なぜか短調の曲の方が多いような気がする。少なくとも長調の曲よりは印象が強い。
彼女の声質から考えると、長調の曲を歌ってもどこかしら抑制された感じがして、抜けるような明るさというものは表現しにくそう。
その代わり、エスプリが薫る品の良さがある。「蝶と花」や5つの歌曲集「ヴェネツィア」はその典型。
逆に「漁師の歌(哀歌)」などの陰影の出しやすい短調の曲の方は、彫りの深い表情で叙情的にドラマティックに歌っているので、シュトゥッツマンには向いているのかもしれない。

<収録曲目>
1.蝶と花 Op.1-1
2.五月 Op.1-2
3.漁師の歌(哀歌) Op.4-1
4.リディア Op.4-2
5.愛の夢 Op.5-2
6.悲しみ Op.6-2
7.夢のあとで Op.7-1
8.河のほとりで Op.8-1
9.ネル Op.18-1
10.秋 Op.18-3

「ある一日の詩」
11.第1曲:出会い Op.21-1
12.第2曲:永久に Op.21-2
13.第3曲:別れ Op.21-3

14.ゆりかご Op.23-1
15.われらの愛 Op.23-2
16.秘密 Op.23-3
17.あけぼの Op.39-1
18.イスファーンのばら Op.39-4
19.夜曲 Op.43-2
20.月の光 Op.46-2
21.憂鬱 Op.51-3

5つの歌曲集「ヴェネツィア」 Op.58
22.第1曲:マンドリン
23.第2曲:ひそやかに
24.第3曲:グリーン
25.第4曲:クリメーヌに
26.第5曲:恍惚

27.牢獄 Op.83-1
28.夕暮 Op.83-2

tag : フォーレ

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(非公開コメント受付中)

夢のあとで
yoshimi-san
こんばんは~!
「夢のあとで」は、チェロでしか聴いたことがないので、このフォーレ歌曲集が一寸気になりました。
ところで、今日、フォーレのピアノ曲をレビューしたので、TBします。
それでは、また!
「夢のあとで」はどの編曲でも素敵な曲です
yuhoto様、こんばんは。

コメント、トラックバックありがとうございます。
フォーレはなぜか歌曲ばかり聴いていて、ピアノの方はあまり聴いたことがないのです。
ドワイヤン(たぶん)の夜想曲集のCDを持っていたような気がするので、ラックの中を探して聴いてみようと思います。
チェロ版も良いですね。たしかイッサーリスのチェロで聴いたことがあります。
御礼方々
yoshimi-san
こんばんは~!
1分でも早くお礼を申し上げたくて、伺いました。
実は、ハイドシェックの記事に頂いたコメントの中に「ベートーヴェンのソナタ32番」の件がありまして、これを読んだ瞬間に「CDジャケットが、ベートーヴェンになっている!」と気付かされたんです。
お蔭様で、公開1日の恥で済みました。
ここに御礼方々、CDジャケットのリンクをフォーレに変更したことをお知らせいたします。
ジャケットのことは気がつかなかったんですが
yuhoto様、わざわざお礼をありがとうございます。
私自身はジャケットの違いには気がつかなかったんです。収録曲のタイトルばかり見ていたので。
ベートーヴェンのCDもお持ちなんですね!私は作曲家のなかでベートーヴェンとブラームスが好きなので、ハイドシェックのベートーヴェンはどんな演奏か興味があります。
NoTitle
フォーレの歌曲集をはじめて聞くので、新しい録音のものを探していました。
音楽雑誌の推薦盤はとても古いものが多いので(1920年代~40年代)
シュトゥッツマン。店頭で探してみます。
シュトゥッツマンはおすすめです
M人様、こんにちは。

コメントありがとうございます。
フォーレの歌曲集の女性歌手による録音は山ほどありますね。
アルトがお好きなら、彫が深く陰翳もあるシュトゥッツマンの声で聴くのも、なかなか良いのではないかと思います。



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Author:yoshimi
<プロフィール>
クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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