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Serkin at the Library of Congress ~ゼルキンの米国議会図書館ライブ
米国の議会図書館には音楽部門(Music Division)があり、”Performing Arts Reading Room”では音楽に関する膨大な資料の収集・リファレンスサービスを行っている。

さらに、半世紀以上も前から定期的にクラシックコンサートを開催している(最近ではピーター・ゼルキンも演奏している)。
かなり昔のコンサートの一部は、”Great Performances From The Library Of Congress”シリーズとしてライブ録音がCD化されている。

ルドルフ・ゼルキンもこのコンサートで、1937年~1959年の間に20回以上演奏をしている。
ゼルキンの演奏は上記シリーズではCD化されていないし、SONYもグラモフォンからもCDはリリースされていない。
このコンサートでのゼルキンの演奏を聴くことができるのは、ゼルキンの伝記 「Rudolf Serkin : A Life」の付録になっているCDのみ。6曲のライブ録音がCD1枚に収録されている。

Rudolf Serkin: A LifeRudolf Serkin: A Life
(2002/12)
Stephen LehmannMarion Faber

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本書は米国でハードカバーしか出版されていないので、結構な価格がついている。日本語の翻訳書もないので、伝記1冊とCD1枚の2点を手に入れたと思えば妥当な価格。
古いライブ録音なので、録音状態はあまり良くなくて、バッハはテープのノイズらしき雑音がザーザー、ショパンではフォルテでピアノの音は割れる、と散々。
しかし、ピアノの音自体はクリアで、響きはわりと綺麗。特にメンデルスゾーンの音質が良い。
何よりも、ゼルキンの演奏の中身自体は良く伝わってくるし、良い音楽を聴いた満足感で満たされるので、音質の悪さは忘れてしまう。

このCDに収録されている曲は次の6曲。

 -バッハ:フランス組曲第5番       (1950年4月14日)
 -メンデルスゾーン:
    3つの幻想曲 Op.16           (1946年12月10日)     
    ロンド・カプリチオーソ Op.14      (1948年5月5日)
    無言歌より「五月のそよ風」 Op.62-1 (1948年5月5日)
    無言歌より「紡ぎ歌」 Op.67-4     (1946年12月10日)
 -ショパン:12の練習曲 Op.25        (1948年5月5日)

ゼルキンの議会図書館コンサートは、アドルフ・ブッシュやブッシュ弦楽四重奏団との室内楽が多かったため、ゼルキンのピアノ独奏は、上記の曲の他には、ハイドンとベートーヴェンのピアノ・ソナタ、シューマンの交響的練習曲、モーツァルトの幻想曲など数曲のみ。

このCDには、リリース済みのゼルキンのCDでは演奏されていない曲が収録されているので、これだけでも手に入れたかいがあったというもの。

バッハのフランス組曲第5番は初めて聴いたけれど、このCDの中では一番好きな演奏。なんて素敵な曲なんだろう思わせてくれるゼルキンのピアノだった。
Allemandeは優しく澄んだ音色が美しく、暖かみがひしひしと感じられる。まるで天使のような優しさがある。(こんなに美しい演奏なので、テープノイズがひどいのはとても残念。)
Couranteはかなり速いテンポになり切れの良いタッチで一気に弾き進んでいく。喜びで舞い上がるかのように躍動的な曲。
Sarabandeはゆっくりと穏やかな曲想になってとても安らかな感じがする。Gavotte,Bourreeとテンポの速い曲が続いて、しっとりとした叙情が美しいLoure、最後のGigueも小気味良いテンポで、喜びに溢れてとても楽しげな感じのする曲。
ゼルキンのピアノは、とても表情が豊かで、曲想に応じてテンポ、タッチ、音色、雰囲気がコロっと変わっている。
この曲に限らず、ゼルキンの弾くバッハを聴いていると、さりげなく自然な表情のなかに人間的な感情や暖かみが感じられてくる。

メンデルスゾーンもとても良い。録音状態も良くて、細やかな表情の変化も良くわかる。
「3つの幻想曲」は初めて聴く曲だけれど、メロディアスな旋律が美しく、ドラマティックな曲も組み合わされ、華やかな技巧もみせる曲。
特に第2曲はピアノ協奏曲第1番を思い出させるような旋律と雰囲気がある。
メンデルスゾーンは得意な曲らしく、ゼルキンはとても生き生きとして楽しそうに弾いている。
ゼルキンは子供の頃にメンデルスゾーンのピアノ協奏曲第1番を弾いてデビューしたし、晩年になってもメンデルスゾーンの曲をコンサートで度々弾いていたから、メンデルスゾーンの曲には愛着があるようだ。

ショパンの練習曲は、前奏曲と並んでゼルキンのレパートリーの中でもレアもの。
最近、ゼルキンのショパンの前奏曲の録音が見つかったらしく、CDがリリースされていた。
ホールの音響で響きが重なって聴きづらいが、ゼルキンが弾く練習曲は、力強くダイナミックな華麗さが際立っている。
ショパン特有の軽やかさや感傷的なところはあまりなくて、重厚で堅牢なドイツ音楽を聴いているような気もしないではないけれど...。
第2番、第6番は、本当に指が良く回っていて鮮やか。第10番も迫力があるが、その後の木枯らしのエチュードはさらに迫力が増して、木枯らしどころか、ブリザードじゃないかと思えてくる。
その勢いのまま第12番も激情的で実に荘重・壮大。演奏が終わると聴衆の大きな拍手。
ショパンの練習曲を弾くゼルキンは本当にパワフルだった。

この頃のゼルキンは、かなりエネルギッシュなピアノを弾いていたようで、1950年前後に録音したベートーヴェンのソナタもテンポは速いし強靭な打鍵が冴えていた。
ショパンはあまり好きではせいか弾き方自体にこだわりはないので、ゼルキンらしさのあるショパンが聴けて良かったと思える演奏だった。

tag : ゼルキン バッハ メンデルスゾーン ショパン

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クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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