カプースチン 《8つの演奏会用エチュード》 

2008, 12. 12 (Fri) 20:14

カプースチンは現代ロシアの作曲家であり、卓抜したテクニックを持ったピアニストでもある。
そのせいか、彼の作品にはピアノ曲が多い。
その作風は曲を聴けばすぐわかるが、限りなくジャズに近いクラシック音楽である。
クラシック音楽と言うにはあまりにジャズ風の作風ではあるが、ジャズというには構造的な堅固さがあり、非常に高度なテクニックと表現力に加え、腕力も必要になる。
そのせいか、レコーディングしているのはヴィルトオーゾ系のクラシックのピアニストが多いようだ。

カプースチンはクラシック畑からジャズに足をつっこんできた作曲家だけあって、彼の作品はジャズピアニストが弾いているオリジナル曲などにはない魅力がある。
メロディアスな旋律、軽快で躍動的なリズム感、煌きのある華麗で重層的な響きと、どれをとっても冴えている。
ジャズ・コンサートで演奏されても全く違和感がない音楽だけれど、これを難なく弾けるジャズピアニストはどれだけいるだろう。
アムランやペトロフといったヴィルトオーゾが録音していることから、その技術的な難易度がわかる。
日本人の最近のジャズピアニストは、クラシックピアノからジャズへ入ってきた人が多く、テクニックがしっかりしているので、全く手も足もでないということもないだろうが、音楽としてちゃんと表現できるレベルで弾くとなると難しい気がする。
ジャズピアニストでカプースチンを録音している人はいないようだ。ライブなら弾いている可能性はあるけど。

                               

カプースチンは高い技巧をもつピアニストでもあるので、和音の厚い響きとスピード感を生かした躍動的で華麗な曲が多い。
有名なのは「8つの演奏会用エチュード」や、アムランが来日コンサートで弾いた「ピアノ・ソナタ第2番」、「24の前奏曲」。
「8つの演奏会用エチュード」はアンコールピースとしても、弾き映えが抜群に良い。曲想もわりと変えているので、8曲全部聴いていてもそれほど飽きることはない。
第1曲と第3曲のリズム感と疾走感が爽快、第2曲と第4曲は響きの美しさが素晴らしい。特に第4曲はうっとりするような滑らかな響き。アムランのピアノが上手いのだろう。第7曲はレトロなジャズ風の洒落た旋律が楽しい。
この曲は、クラシックオンリーの人が聴いても全然うけない曲だと思う。
ジャズピアノ曲として聴くととても洗練された作風なので、スタンダートではなくモダン・ジャズが好きな人なら、疾走感と煌くような和音の響きとジャズらしい洒落た雰囲気はかなり楽しめるに違いない。

「8つの演奏会用エチュード」は、カプースチンの自作自演盤と、アムランなどのピアニストが弾いているものがある。
自作自演盤以外だと、アムランの演奏は技術・表現力とも申し分なく、安心して聴ける。
曲自体も素晴らしいけれど、アムランは、冴えたテクニックはもちろん、リズム感、スピード感、音色や響きの美しさは抜群で、その切れの良い演奏には惚れ惚れしてしまう。
アムランだと技術的な難しさを全く感じさせない都会的な洗練された音楽に聴こえるが、カプースチンの自作自演盤は重戦車のような迫力があるらしい。
アムランのCDはituneでもダウンロードできるので、好きな曲だけ聴くこともできる。

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「8つの演奏会用エチュード」以外には、「24の前奏曲」「スィート・イン・オールド・スタイル」、「異なるインターヴァルによる5つのエチュード」などのピアノ曲がある。
エチュードよりもソフトなジャズっぽさの強い曲なら「24の前奏曲」が聴きやすい。
「スィート・イン・オールド・スタイル」も、煌びやかなエチュードとは少し違う穏やかな楽想の曲もあってわりと好きだけれど、他の曲集と続けて聴いていると、似たようなテイストの曲が多いので、だんだん食傷気味になってくる。

カプースチンは「ピアノ・ソナタ」も作曲していて第16番まであるが、特に第2番のピアノ・ソナタは有名で、第1楽章はとても明朗・爽快・スピード感も抜群。
複数楽章に分かれているので、それぞれ曲想も変えてあり、曲としてはエチュードや前奏曲よりもずっと面白いと思う。
16曲全部聴かなくても良い気がするし、録音されている曲は限られているので、ピアノ・ソナタなら第2番から聴きはじめると、とっつきやすくて良い。

モダン・ジャズの世界はピアノ・トリオがかなり流行っているが、独創性とテクニックの両面で優れたオリジナル曲を弾くピアニストがなかなか出てこない。
ブラッド・メルドーやアントニオ・ファラオとか良いピアニストはいるけれど、逸材不足が深刻そうだし、ヨーロピアンジャズやスムースジャズといった口当たりの良い曲が結構流行っている。
強烈なインパクトとオリジナリティのあるピアニストは本当に少なくなった気がする。巨人的ジャズピアニストが君臨していた時代は遠くなりにけり、といったところでしょう。
今のジャズピアニストが弾くピアノを物足りなく思っているなら、一度このカプースチンの音楽を聴いてみれば良いと思う。

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