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カッチェン&マントヴァーニ ~ ガーシュウィン/ピアノ協奏曲ト長調
これはガーシュウィンを演奏した数あるアルバムの中でも、異色の組み合わせ。
”パリのアメリカ人”ピアニストであるジュリアス・カッチェン、ムード音楽の雄マントヴァーニ&マントヴァーニ楽団の共演によるガーシュウィンの「ピアノ協奏曲ト長調」と「ラプソディ・イン・ブルー」。
この演奏、まがいなりにもクラシック音楽(らしい)だけれどこれが結構笑える。

ジャケットは悪ふざけのような遊び心があって楽しいデザイン。
演奏は、一体これはクラシックなのかジャズなのかわからなくなってくるが、元気いっぱいのマントヴァーニ楽団の伴奏(というか、もう伴奏であることを忘れているんじゃないかと思う派手な演奏)と、それに触発されてか、負けじと強靭なタッチでガンガン鍵盤を叩いているカッチェン。
当時のDECCAもこんな奇妙奇天烈なCDを作るなんて、なかなか洒落のわかる会社とプロデューサーがいたものだ。

Gershwin: Rhapsody in BlueGershwin: Rhapsody in Blue
(2004/07/01)
George Gershwin



ガーシュウィンのピアノ協奏曲は初めて聴いた曲。こんなに面白い曲だったなんて、もっと早く聴くんだった。
ジャズ・ピアニストが弾くガーシュインのピアノ曲は、独特のアンニュイな雰囲気が強すぎて聴く気はしないが、このピアノ協奏曲はガーシュウィンがクラシックの書法を勉強して作曲したというだけあって、ジャズとクラシックが融合した堂々とした協奏曲。(といってもやっぱりジャズに限りなく近い音楽だとは思う。)
「ラプソディ・イン・ブルー」よりも、ピアノが派手に動き回るし、物憂さげなムードたっぷりのメロディも出てくるので、ピアノを聴くならこのピアノ協奏曲の方がはるかに面白い。

ガーシュウィンのコンチェルトは、クラシックの世界だとオーケストラ伴奏なのが普通。
アンドレ・プレヴィンはロンドン響やピッツバーグ響で、パルカル・ロジェはウィーン放送響のバックで弾いている。
オーケストラだと、ジャズ風には演奏してはいるけれど、どこかしら折り目正しさを感じさせるところがある。それに楽器編成が大きいので、響きが立派すぎて、スピード感も欠けがち。
一方このCDはというと、派手でお茶目でアンニュイな雰囲気いっぱいのマントヴァーニ指揮マントヴァーニ楽団(Mantovani and his Orchestra)の伴奏。
いわゆるジャズを演奏するビッグバンドではなく、ムード音楽などのポップスを演奏するオーケストラ。オリジナル編成は42名前後で、「カスケーディング・ストリングス」と言われる流麗できらびやかな弦楽アンサンブルの美しさが特徴。弦楽以外のセクションも生き生きと元気いっぱい。
負けじとカッチェンも目いっぱいジャズっぽい雰囲気(といっても上品だけど)に、強靭なタッチで気合の入ったピアノを弾いている。

カッチェンは、メカニック面が抜群に良いので、速いスピードで力技で弾いていても余裕があって、派手めのクレッシェンドの盛り上がりや強いアクセントをつけたりと、山あり谷ありのメリハリがよく効いている。何より煌びやかな音色で華やかなピアノを弾いている。

第1楽章で登場するモチーフが印象的。チャールストン(たぶん映画でよく見るダンスホールで踊っているときにかかる曲だとは思うけど)から着想したらしい。
冒頭は楽団による主題のモチーフの演奏。その後に始まるピアノが、やや怪しげな雰囲気で華麗に別のモチーフを弾いている。ここはピアノの音色が煌びやかで、ちょっと幻想的な響きが綺麗。
この後にアンニュイな雰囲気を漂わせながら、楽団とピアノが同じモチーフを流麗に協奏していく。
ついには明るく楽しい長調へと転調して、楽団とピアノの掛け合いが始まる。
マントヴァーニ楽団の伴奏は、どこかとぼけた雰囲気があるのに、カッチェンのピアノはとても華麗で品の良さがある。スイングしていないとでもいうんだろうけど、このアンバランスさが笑える。
ラストに向かって伴奏が勢いを増してくるので、カッチェンのピアノも鋭い打鍵と弾むようなリズム感でガンガン弾きこんでくる。
この第1楽章は、主要なモチーフがいろいろ変化して次から次へ登場するので、全く展開が予想できなくて、とっても面白い。だんだん映画音楽のメドレーを聴いているような気分がしてくる。

第2楽章は穏やかで楽しげな曲想に変わるけれど、マントヴァーニ楽団はどんなに静かなモチーフを演奏していても、どこかしら元気がある。
トランペットがあちこちで主題を吹いている。オーケストラ奏者が吹くトランペットと違って、本当にジャズっぽさたっぷりのトランペットの音と雰囲気がしている。やっぱり上手いですね~。
カッチェンの弾くピアノパートはかなりジャズ風の旋律。タッチと響きを次々に変えて雰囲気の変化に合わせている。叙情的な旋律を弾かせたら上手いけれど、崩したところがないのがやっぱりクラシックのピアニストらしい。

第3楽章は冒頭からスピード感・迫力とも抜群。打楽器のようにピアノが力強く連打する。カッチェンの鋭い打鍵と躍動するリズム感が冴えている。
緩急のコントラストが鮮やかで、途中で急にゆったりと軽快な旋律やムーディな旋律が出てきたと思うと、突如として突進するように、楽団とピアノが元気良く最初のモチーフを連打し始める。
ラスト近くでトランペットたちが吹く旋律はまるで弾丸のように速くて鋭い。マントヴァーニ楽団の伴奏の爆発しそうな迫力・スピード感は凄い。
この楽章はあれよあれよという間に終わってしまった。

ポップスオーケストラとクラシックピアニストの組み合わせは、真面目な人にはあまり受けがよくないと思うけれど、この組み合わせだからこそ当時の熱っぽいジャズの世界の雰囲気が堪能できる。
とにかくやたら元気で華麗で洒落っ気のあるマントヴァーニ楽団の伴奏だったし、カッチェンもそれに負けずに強靭で、品の良さはあったけれどムーディだった。
カッチェンは結構楽しんでピアノを弾いていたんじゃないかと思う。

 『ジュリアス・カッチェンにまつわるお話』

 ジュリアス・カッチェンのディスコグラフィ

tag : カッチェン ガーシュウィン

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(非公開コメント受付中)

こんにちは。

ガーシュウィンのピアノ協奏曲は昨年だったかな?もう少し前だったかな?小澤さんがマーカス・ロバーツ・トリオと組んでベルリン・フィルとやったもの、N響と協演したものをTVで見ました。それ以来この曲が気に入っています。

今回紹介のCDは、僕の大好きなマントヴァーニがバックをつとめていますから、絶対聞かねばなりませんね!!
ガーシュウィンのコンチェルトは傑作です
よんちゃん様、こんにちは。

このガーシュウィンのコンチェルトはこのCDで初めて聴いたのですが、私もすぐに大好きになりました。特に独特のリズム感のあるモチーフの第3楽章が好きです。
ジャズ・ピアノは良く聴きますが、ガーシュウィンはあまり聴かなかったので、食わず嫌いは良くないと後悔したくらいです。

小澤さん&マーカス・ロバーツ・トリオの演奏もあるんですね。古くはアンドレ・プレヴィンも録音していて、ジャズピアニストにとっても、弾き応えのある曲なのでしょう。

小曽根真(彼は20年以上前から聴いてます)もライブで弾いたそうなので、映像を探したんですが、「ラプソディ・イン・ブルー」の方をニコニコ動画で見つけました。
やはりジャズピアニストが弾く即興のカデンツァは、クラシックのピアニストでは絶対に真似できないところがあります。これもとても良い演奏です。

このCDは本当にお勧めです。
カッチェンのテクニックが冴えて、力強さとリズム感も抜群。クラシックのピアニストが弾いた中では、ベストかベストに近いんじゃないかと思えるくらいです。
なによりバックのマントヴァーニ楽団が最高!これを聴いたらオケでは聴けません。

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yoshimi

Author:yoshimi
<プロフィール>
クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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