チェリビダッケ&ミュンヘンフィル東京公演ライブ ~ ブラームス「交響曲第4番」 

2008, 12. 08 (Mon) 18:55

ブラームスの交響曲第4番といえば、クライバー、バーンスタイン、ジュリーニがいずれもウィーンフィルを指揮した演奏を聴いているけれど、20年以上前に聴いたチェリビダッケ/ミュンヘンフィルの東京公演の演奏ほど感動したことはなかった。
チェリビダッケは録音嫌いだったため、その頃CDで入手できるのは海賊盤。といっても、やけに音質が良くて、どこでいつ録音したのかも記載されていないけれど、この海賊盤は良く聴いていた。

チェリビダッケの没後、EMIからチェリビダッケ/ミュンヘン・フィルのベートーヴェン&ブラームス全集が出たので、すぐに聴いてみた。
たしかにチェリビダッケのブラームスが聴こえるけれど、昔聴いた研ぎ澄まされた弦の響きの美しさと全体を覆う緊張感の両方がやや薄い気がして、何か物足りなさを感じていた。
このEMIの全集に収録されている第4番のライブ録音は、実はミュンヘンフィルの楽団員たちが選んだセカンド・チョイスのミュンヘン・ライブ。
ファーストチョイスは、1986年の東京公演の演奏だったと、これはALTUSのCDのライナーノートを読んで初めて知った。

ベートーヴェン&ブラームス・チェリビダッケ・エディション VOL.3ベートーヴェン&ブラームス・チェリビダッケ・エディション VOL.3
(1999/06/09)
ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団ミュンヘン・フィルハーモニー合唱団

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(今は分売盤があるが、この頃は全集のBOXセットしかなかったので、結構な値段がしたのを覚えている。)


東京公演のライブ録音がALTUSからリリースされているのをたまたま見つけたときは、歓喜してすぐにオーダーした。
聴いてみると、昔の記憶が蘇るようなあの懐かしいブラームスの第4交響曲だった。
チェリビダッケを聴くのなら、EMI盤よりも、このALTUSの東京ライブ盤が絶対に良い。
ミュンヘンフィルの楽団員自身がベストだと言っているくらいだから、素晴らしい演奏であることに間違いはない。

ブラームス:交響曲第4番 他 (2CD)ブラームス:交響曲第4番 他 (2CD)
(2007/06/08)
ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団

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(これは2CDで、当日のプログラム全部とアンコールに加え、ブラームスのリハーサルの一部まで収録したもの。なぜかHMVで期間限定で\1050という信じられない価格で販売されていた。)

チェリビダッケ/ミュンヘンフィルの演奏は、第1楽章冒頭の極度に研ぎ澄まされ凝縮された弦楽器の音色の美しさが素晴らしく、全編には緊張感が漂っている。1本の線であるかのように張り詰めたヴァイオリンの音色が弾く旋律は、悲痛ささえ感じるほどに美しい。
それほど速いテンポではなく、静けさが支配しているが、微妙な強弱のコントロールがよく効いていて、1つのフレーズでもうねりや細かい起伏をつけて演奏しているので、平板な感じは全くしない。響きは重厚さはあるが、旋律はとても滑らかで流麗。拍子を刻むようにアクセントをつけて演奏するところで切迫感を出している。
録音状態が非常に良く、いろいろな楽器の音が綺麗に分かれて聴こえてきて、細かい心のひだがいろいろな楽器で表現されているのが聴き取れる。
第1楽章の終盤へ向かうにつれ切迫感が強まり、内面の葛藤が激しくなるかのようである。こういう盛り上がりの作り方が、ドラマティックだけれどなぜか自然に湧き上がってくる感じがしてとても上手いと思う。このあたりから、チェリの気合の入った声が何度も聴こえてくる。
第1楽章は、全編を通奏低音のように寂寥感と悲痛さと諦観めいたものが流れている。多くの友人達がこの世を去っていったブラームスの晩年の心境を映し出しているようだ。

第2楽章は再び穏やかなゆったりとした旋律にもどる。
冒頭からいろんな管楽器が交互に旋律を吹いているので、第1楽章の弦の音色が出すような緊迫感は薄れている。
まるで第1楽章の終盤でかられた激情から一転して、内面へ沈潜していくかのような穏やかさがある。
やがてヴァイオリンが旋律を奏で始めるのだけれど、ここが本当に流麗で美しい。
終盤では、一瞬激しく連打するような旋律が出てくるが、すぐに消え去り弦楽器が低音で弾く悠然とした流れにもどって行く。心の中の感情の揺れがリアルに再現されているかのように聴こえてくる。
この対比がとてもドラマティック。あからさまな激情をみせるのではなく、心の中で渦巻く激情を押し殺すかのような重苦しさがある。

第3楽章は一転して動きが激しくなるが、クライバーの指揮だとここは強い躍動感で颯爽とした演奏になる。本当に明るいブラームス。
チェリビダッケの指揮だと、明るさはあるがクライバーのような軽快さは少なく、テンポもそれほど上げてはいない。第1楽章と第2楽章で張り詰めていた緊張感と重苦しさが消え、明るさが一瞬垣間見えたかのようである。拍子をきちっと刻んでいるような演奏なので、不思議とリズム感がある。重厚さと躍動感がほどよく調和した堂々とした演奏だと思う。

第4楽章になると、冒頭からまた重苦しさと緊張感が蘇ってくるが、この楽章は第1楽章で見えた諦観は消え去り、冒頭から強い意志が感じられる。
終盤へ向かって弦の大きなうなりのなかで徐々に高揚していくかと思うと、再び沈潜していき木管楽器が順番に物悲しい旋律を奏でていくという、感情の浮き沈みが激しい。
終盤になるにつれ、チェリビダッケの気合の入った声が、また良く聴こえるようになってくる。チェリビダッケは、曲が高揚し始める局面になると、オケを叱咤するクセがあるようだ。
最後は弦と打楽器が力強い響きで終えるが、人生の終盤を寂寥感や悲痛な気持ちで迎えていようとも、それに負けず乗り越えようとする決然とした強さを感じさせる。

チェリビダッケとミュンヘンフィルの演奏を聴いていると、理性で強く抑制されている心の中で、いろいろな感情が渦巻いているのを見せられているように感じる。まるで人間の心の中で湧き起っているドラマを見ているような壮大さがある。
このブラームスは、重厚な美しい響きによって、この曲に込められた心情を余すところなく描き出したドラマティックなブラームスで、何度聴いてもいつも感動してしまう本当に素晴らしい演奏だと思う。

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