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リヒテル ~ チャイコフスキー/ピアノ協奏曲第1番
チャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番は、重厚長大でロシア的な趣きがあって苦手なので、CDも集めなかったけれど、リヒテル、アラウ、カッチェンのCDだけは持っている。
リヒテルの演奏は名演とされているし、彼の伝記でとりあげられていた演奏で興味があったので手に入れたもの。

チャイコフスキー:ピアノ協奏曲 第1番 変ロ短調/ラフマニノフ:ピアノ協奏曲 第2番 ハ短調チャイコフスキー:ピアノ協奏曲 第1番 変ロ短調/ラフマニノフ:ピアノ協奏曲 第2番 ハ短調
(2001/10/24)
リヒテル(スヴャトスラフ)

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リヒテルの演奏はカラヤン指揮ウィーン交響楽団の伴奏。
ピアノもオーケストラもフォルテの音量がバカに大きくて迫力はあるけれど、ピアノを覆いかぶすかのように、カラヤンの指揮でオーケストラをガンガンと鳴らしている気がする。
ピアノをオーケストラの響きの中に吸収してしまおうとしているかのようだ。
この曲を演奏するカラヤンはいつもそうなのかもしれないが、カラヤンは自分の音楽を優先するので、ソリストにはその音楽の中に溶け込むことを求めているのかもしれない。
リヒテルは冒頭こそ自由におおらかに弾き始めていたようだが、リヒテルも自分の音楽を優先するので、オケに負けずに弾いてはいるが、第3楽章ではやや疲れ気味に聴こえる。

第1楽章はピアノのソロが前面に出るところが多いので、それほどオケがかぶってこない。
テンポは遅い方だとは思うが、リヒテルがゆったりと構えて、緩急自在に弾いている。さすがに弱音で弾くところはリヒテルらしく詩情豊かで美しい。

第2楽章は、ロシアの雪と氷で覆われた大地を遊覧しているような感じで、母なる大地のごとく自然は泰然自若としてまったく揺らぎがない。
透明感はあるが澄んだ水や氷のような美しさがある。清々しくはあるが、暖かさは感じない。
この楽章もリヒテルのピアノは詩情をあれこれと歌っていて美しい。

第3楽章は、伴奏がかなり大きい音量でピアノにかぶってくるので、リヒテルのピアノも力強くは弾いているが、オケに負けている感じがする。
リヒテルならもっとダイナミックに弾けると思うけど、いい加減疲れてきたのか、カップリングされているラフマニノフを弾いていたときのようなきらめきがないような気がする。気のせいかもしれないけど。こればかりは弾いている本人に聴いてみないことにはわからない。
演奏全体に重量感があるので、速いテンポで弾いても、やや躍動感が不足気味で重たい感じがする。オケとピアノが力勝負しているような気がするからかもしれない。
この楽章は特にオーケストラの伴奏がやたら前面に出たがっているように聴こえるし、とにかく馬鹿でかい音量の伴奏だった。

もとから重いチャイコは好きではなかったので、聴いていて段々疲れてきてしまった。
ロシアの大地の地響きが聴こえてくるような重厚さ、悠然かつ雄大な演奏を好む人なら、リヒテル&カラヤンの演奏が向いているとは思う。

リヒテルの伝記で書かれていたが、この演奏では、リヒテルがカラヤンに(たぶん2楽章の)途中で伴奏が始まるところの合図をして欲しいと頼んだのにカラヤンが拒否して、リヒテルにとって多少なりとも響いたようだ。
このエピソードも知っているせいか、この協奏曲を弾くリヒテルと指揮するカラヤンの間に信頼とか理解とかいった関係が成立しているようには思えないので、余計に聴いていて疲れたのかもしれない。

リヒテルは伝記のなかで、カラヤンの指揮でベートーヴェンの三重協奏曲を弾いたときの演奏解釈の違いをめぐる騒動についても触れている。
このときは、全然ピアノを弾く気が起こらなくて小さな音量でピアノを弾いていたという。
リヒテルは、カラヤンに対して全く好感を持っていなかったようだけれど、音楽の作り方が正反対な2人だし、無理ないかも。

リヒテルの伝記を読んでいると、世評では名演だと言われている演奏が、弾いた本人は不満足な出来だと思っている曲が何曲もある。他のピアニストや演奏者でも、その類の話は聴いたことがある。
結局、人間の耳は結構あてにならないものだとわかったことで、かえって自由に音楽を聴くようになれたという点では、とても役に立った伝記だった。

tag : リヒテル チャイコフスキー

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クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

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