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カプースチン ~ カプースチン/ピアノ・ソナタ第2番
ロシアの作曲家カプースチンは、モスクワ音楽院では古典音楽しか弾かなかったことから、周囲からクラシックの世界でヴィルトオーゾピアニストの道を歩むと思われていた。
テクニックの凄さは折り紙つきだけに、カプースチンによる自作自演のCDを数多くリリースしている。
彼の代表作の一つ「ピアノ・ソナタ第2番」などをカプースチンが弾いているこのCDもその一つ。

このカプースチンの演奏を聴いて、アムランやオズボーンが弾いているカプースチンのピアノ曲の演奏と比べれば、カプースチンのテクニックの凄さが良くわかる。
まるでギレリスのような(それを上回るかも)鋼のように弾力のあるごつごつとした強固なタッチ。
どんなに速いポリフォニックなフレーズであっても、全く崩れることのない堅牢さ。
縦の線をそろえるかのように正確に刻まれた拍子。ジャズピアニストのようなリズムやテンポを崩すような弾き方ではない。
眩く輝く音色、密度の濃い音と荘重な響き、圧倒されるような重量感とスピード感と躍動感。
これだけのオリジナルを作曲し、弾くことのできるジャズピアニストはほとんど(というか全く)いないだろうとさえ思えてくる。

アムランの演奏は、カプースチンが弾くよりも響きや音色が多彩で美しく、流れるように滑らかに弾いていて、とても洒落た都会的な曲に聴こえる。
自作自演盤は、カプースチンはこういう音響空間をイメージしていたのかと理解できる点が良いけれど、一番聴きやすいのはやはりアムランのピアノ。
オズボーンの弾き方はマイルドすぎて、曲自体の持つパワーが失われている。
重戦車のように迫力のあるカプースチンのピアノをヘッドフォンで聴くと、頭が痛くなってくるので、スピーカーから聴いた方が良いと思う。

カプースチン:ピアノソナタ第2番&第3番カプースチン:ピアノソナタ第2番&第3番
(2005/08/25)
カプースチン(ニコライ)

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このCDには、ピアノ・ソナタの第2番と第3番、ピアノ曲の「アンダンテ」、「チェロのための序奏とスケルツィーノ」、「アルト・サックスとチェロのための二重奏」の5曲が集録されている。
第2番と「アンダンテ」はジャズピアノ、第3番はジャズとは無縁の現代音楽風、残りはピアノを使っていないチェロやアルト・サックスのための器楽曲。
バラエティのある選曲なので、カプースチンの作風をいろいろと知るには良いCDだと思う。ジャズ風のピアノ曲ばかり聴いていると、さすがに飽きてくる。

ピアノ・ソナタ第2番は第一楽章が抜群に良い。
明るく煌びやかな雰囲気のジャズ風な曲想と旋律で、強く躍動するリズム感とカプースチンの弾力のある力強いタッチが冴えている。
構築物のような堅牢さと重量感があるけれど、旋律は伸びやかで、輝きのある音色とポリフォニックな響きが良く映えて華麗なピアノ。ピアノが高らかに旋律を歌い上げている。
この曲を聴いていると、心が明るく弾むような気分になってくる。
ituneでオズボーンの演奏は試聴できる。旋律がどんなものかわかるけれど、カプースチンのピアノはオズボーンと全然違っていて、強靭でダイナミック。

第2楽章は第1楽章とは全く趣きの違うやや不協和音的な響き。目まぐるしい細かな動きで刻むようなスケルツォ。
第3楽章はLargoで、ゆったりとした曲想になりほっと一息。明るめのジャズ・バラードのような雰囲気があり、響きの美しさがよく味わえる。
しっとりとした情感があるはずの旋律だけど、相変わらずカプースチンのタッチが強くて鋭いので、わりと雄弁にピアノが歌っている。
第4楽章は、再びピアノが目まぐるしく動き回る。第1楽章のようなわかりやすい主題の旋律がないので、音自体が舞踏する様を聴いているような感覚になる。

ピアノ・ソナタ第3番は、第2番とは全く異なり、ジャズとは無縁の実験音楽的な曲。
といっても現代音楽的な難解さは希薄で、調性音楽の範囲内にあるので、現代音楽に多少なりとも触れた人ならほとんど問題なく聴けるはず。
色調は暗めで響きは短めに抑えていて、躍動感も薄いので、他のピアノ小品ばかり聴いている人は違和感を感じるかも。

「アンダンテ」はジャズらしい洒落た旋律でスローテンポの曲。煌くような華やかな音色と響きが美しい。
このままジャズクラブで弾いても何の違和感もない曲なので、人気曲といわれるのがよくわかる。

「チェロのための序奏とスケルツィーノ」と「アルト・サックスとチェロのための二重奏」も実験音楽的で旋律に馴染みやすさはないが、均整のとれた美しさがある。
カプースチンの曲をピアノでなくチェロやサックスで聴くと、こういう音になるのかというのが良くわかる。
チェロの深みのある音色やアルト・サックスのくぐもった音色がとても心地よくて、躍動的なピアノ曲に比べて穏やかな印象になる。

カプースチンを聴くなら、このアルバムとアムランのピアノ作品集を揃えれば、有名曲と作風の違った曲が結構揃うし(前奏曲は入ってないけど)、アムランとカプースチンのピアノの違いも楽しめると思う。

tag : カプースチン

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クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
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