ラウタヴァーラ/カントゥス・アルクティクス<鳥の声と管弦楽のための協奏曲> 

2008, 12. 24 (Wed) 20:13

エイノユハニ・ラウタヴァーラは、その作品数の多さのわりには、日本ではあまり知られていないかもしれない。名前がまたややこしくて、タウラヴァータやラウタヴァータとか、いつも間違ってしまう。

ラウタヴァーラは1928年生まれのフィンランドの作曲家で、同国を代表する作曲家の一人。
有名な作曲家のメリカントに師事し、シベリウスの勧めでジュリアード音楽院へ留学した人。
作風がかなり変遷しているようなので一概にはいえないが、音の響きにこだわっているところがあるので、不協和音の旋律であってもなぜか違和感をそれほど感じない美しさがある。

ラウタヴァーラは、交響曲を8曲、ピアノ協奏曲を3曲、他にもヴァイオリン協奏曲やチェロ協奏曲、ピアノ独奏曲や室内楽曲、声楽曲などを作曲していて、ジャンルは幅広い。
中でも交響曲第7番「光の天使」(これは聴いたことがない。演奏したCDが1997年度のグラミー賞にノミネートされたらしい)、「カントゥス・アルクティクス(北極圏の歌)」<鳥の声と管弦楽のための協奏曲>は有名。
ピアノ協奏曲は、アシュケナージが第3番を録音していて、この曲は「夢の贈りもの」という題名がついている通り、叙情豊かな美しい(けれど激しい)曲。
ピアノ協奏曲は交響曲に比べると、どれも聴きやすい方だとは思う。

ラウタヴァーラ:カントゥス・アルクティクス(鳥とオーケストラのための協奏曲) ラウタヴァーラ:カントゥス・アルクティクス(鳥とオーケストラのための協奏曲)
(1995/04/21)
ポンマー指揮ライプツィヒ放送交響楽団

商品詳細を見る


このCDには、「カントゥス・アルクティクス」、「弦楽四重奏曲第4番」、「交響曲第5番」と全く作風の違う音楽が収録されている。
「弦楽四重奏曲第4番」、「交響曲第5番」は、「カントゥス・アルクティクス」に比べてとっつきにくい曲なので、現代音楽をほとんど聴いていない人には聴きづらいかもしれない。
「交響曲第5番」は、相互に対する概念を表した旋律がぶつかりあっているような音楽。
協和的と不協和的、ロマン的と前衛的な旋律が形を変えて展開していくので、感情移入できる曲ではないが、曲の構造には面白いものがある。(最後まで聴きとおすのには、多少の忍耐力がいるような気はする。)

ジャケットは北欧の冬の厳しさが感じられるセンスの良いデザイン。このCDの帯には「北極詩編」というコピーが書いてあって、これに魅かれて買ったような気もする。

「カントゥス・アルクティクス(北極圏の歌)」はラウタヴァーラの代表作。
”鳥の声と管弦楽のための協奏曲”と副題がついている通り、テープに録音された鳥の声とオーケストラとが対話しているような曲である。
3つの楽章に分かれていて、「湿原」、「憂鬱」、「白鳥の渡り」とタイトルがついている。

1.「The Bog 湿原」
ラウタヴァーラはフィンランドの作曲家なので、日本なら温暖な尾瀬の湿原ではなく、寒さが厳しく見渡す限り果てしなく続く釧路湿原あたりのイメージに近いと思う。
冒頭はクラリネット(だと思う)のソロで、まるでシサスクの音楽のような不思議な響きがしてくる。鳥たちの声が聴こえてくるにつれて、他の管楽器が徐々に加わっていき、オーケストラの響きが厚くなっていく。
鳥たちの声と対話するかのように、ゆったりとしたテンポで悠々と奏でられる旋律はとても雄大で美しく、時としてドラマティック。底流には、自然に対する敬虔さのようなものが流れているような曲である。

2.「憂鬱 Melancholy」
冒頭は鳥の声だけが流れてくるが、やがてヴァイオリンが旋律を奏で始め、徐々に他の弦楽器や管楽器が加わっていく。確かにメランコリックなメロディと響きがするが、ウェットな感傷じみたものは感じられない。

3.「白鳥の渡り Swans Migrating」
冒頭は、これから渡っていこうとする白鳥たちの声が流れてくる。そのうち木管楽器がいろいろな鳥の声を模したように旋律が混み入り、錯綜してくる。この旋律はとても不思議な雰囲気を持っている。
白鳥の声と木管群の音が流れるなかを、ホルンや弦楽器がゆったりとした旋律を奏で始める。これがとても雄大で清々しさがあり、まさに渡り鳥たちが飛び立とうとしているかのようである。

全体的には動きの少ない音楽だけれど、旋律や響きは美しく、鳥たちが集う広大な湿原を目の前で見ているかのような気がしてくる。
イメージを喚起する力が強く、リアルな鳥の声を使っているせいか、自然な雰囲気とそこはかとなく暖かさも感じられる。現代音楽的な難解さは全くないという、とても聴きやすい曲だと思う。

この曲は、ポンマー指揮ライプツィヒ放送交響楽団による演奏をナクソスで試聴できる。
http://ml.naxos.jp/work/187881
(各楽章の冒頭のほんの少ししか聴けないので、曲のイメージがほとんどわからないような気がする。)

ラウタヴァーラの音楽に関する詳しいサイトはこちら。ここには、北欧の近現代音楽の情報もたくさん載っている。特にCDレビューが充実している。
これだけ北欧音楽の情報が豊富なサイトは、日本語版ではそれほど多くないと思う。

タグ:ラウタヴァーラ

※右カラム中段の「タグリスト」でタグ検索できます。

0 Comments

Leave a comment