ホスティング
気ままな生活 パスカル・ロジェが弾くプーランクのピアノ曲

2008.12/28(Sun)

パスカル・ロジェが弾くプーランクのピアノ曲

村上春樹の「日曜の朝のフランシス・プーランク」を読んだら、無性にプーランクを聴きたくなってきてしまった。
ピアノ曲、ピアノ協奏曲、歌曲、宗教曲のどれをとっても、プーランクらしさが溢れているので迷うところだけれど、こういう時は一番好きなピアノ曲から。

プーランクのピアノ曲とくれば、パルカル・ロジェ。1986年〜1998年にかけて、プーランクのピアノ曲・室内楽曲全集を完成させている。
最近はエリック・ル・サージュも評価が高いようだ。テクニックの切れ味がよく、音色・響き・表現も多彩で、ル・サージュは本当に上手い。彼のプーランクは明晰で自由さがあるが、ちょっとキザっぽいプーランク。
私は柔らかな陽光がさしこんでくるような優しいロジェのピアノの方が気に入っている。

パスカル・ロジェは1951年生まれ。1961年パリ音楽院ピアノ科に入学し、65年にピアノと室内楽で一等を得て首席で卒業後、ジュリアス・カッチェンの元で3年近く学んだ。
年から考えると、カッチェンの亡くなる直前まで、カッチェンに師事していたと思う。
ロジェはわずか17歳でDECCAと専属契約を結ぶ。有名な国際コンクールでの入賞歴のない若い(それも17歳の)クラシックのピアニストと大手レーベルが専属契約をするというのは、そうありふれたことではないと思う。
カッチェンはDECCAで多数の録音をしていたので、ロジェとの録音契約についてDECCAに頼んだらしく、それがきっかけでDECCAがロジェと契約するようになったという話を聞いたことがある。
69年4月にカッチェンは肺がんで亡くなるが、自分の病のことを知ってか知らずか、自分の若い弟子の将来のことを気にかけていたのだろう。
ロジェは67年エネスココンクールで入賞し、69年1月にパリでデビュー。このデビューリサイタルの際に、カッチェンは推薦文を寄せていて、ロジェは「生まれながらの自然なヴィルトゥオーソ」であり、「ロマン的な高揚、驚くべきリズミックなヴァイタリティ、ビューティフル・サウンド、フランス人特有の詩趣」がロジェの演奏の特質であると書いている。
そして71年にロン・ティボー国際コンクールで優勝したことで、一躍注目を集めるようになった。

                                       

これは、ロジェが弾いているピアノ曲とピアノの入った室内楽曲を収録した5枚組の全集。
私の持っているCDは、ジャケットイラストだけが一緒で、2枚目のCDだけ分売されていたもの。
随分昔に買ったもので、今はこの分売盤は廃盤になっている。

Poulenc: Piano Music; Chamber WorksPoulenc: Piano Music; Chamber Works
(2008/09/02)
PoulencPascal Roge



ロジェは、プーランク、ラヴェル、ドビュッシーなどのフランス音楽の演奏にかけては定評がある。
ロジェの特徴は、確かな技巧に、明るい音色と透明感のあるタッチと言われているようだけれど、それに加えて繊細な表現力がある。
なにより彼はとても素直なピアノを弾くので、自然に心に溶け込んでくるところがある。
彼の羽毛のような優しいタッチで弾く弱音を聴いていると、なぜかカッチェンが弾く弱音に似ているような気がしてくる。もしかして師匠譲りなのかも。

1.ユモレスク
明るくてとても躍動的な曲。中間部はメンデルスゾーンのピアノ協奏曲第1番に似た雰囲気があって、優美で華やかな曲想。
久しぶりに聴くロジェのピアノの音は本当に綺麗。明るくきらきら輝いて、タッチや音色もくるくる変化する。響きが羽毛のように柔らかくて耳ざわりがとても良い。

2.8つの夜想曲
ショパンのノクターンを聴くといつも眠くなってしまうけれど、プーランクのノクターンは、ショパンとは一味違う明るく軽快な曲が多い。
時おり翳りがちらつくけれどそれもすぐに消え去り、屈託のない明るさと夢見るようなファンタジーがいっぱい。
特に第1番の幸福感に溢れた旋律と、第7番の宝石が零れ落ちてくるようなきらめきのある旋律が美しい。
調和のとれた美しい旋律の曲が多いが、ドビュッシーのピアノ小品のような道化めいた旋律が聴こえたり、不協和音がちりばめられたりと、ひとひねりやふたひねりあるところが、プーランクらしい。

3.ピアノのための組曲ハ長調
冒頭はピアノへの優しい愛情が溢れてるような柔らかい響きとレガートの旋律。中間部は活気と躍動感で弾けるような曲想。その後はゆったりと夢の中にいるような調べで終わる。

4.Thèmevarié(主題と変奏)
明るめの穏やかな旋律の主題が提示された後は、軽快、力強さ、優美、躍動、安らぎ、軽妙、静けさ、跳躍、華麗、.....最後は堂々としたフィナーレ。変奏ごとにメロディそのものと雰囲気が変化していく。
変奏という言葉の如くバリエーションに富んでいて、プーランクにはとても多くの引き出しがあったに違いない。
次から次へとメロディが浮かんできたドヴォルザークのように、プーランクもそれほど苦労せずに音楽が湧き出てくるような作曲家だったのかもしれない。

5.即興曲第4、5、9〜11、14番
タイトルどおり、ふわふわっとしたとらえどころのなさがあって、かなり自由な曲想の曲集。次から次へと流れるような旋律で埋められている。

6.2つの間奏曲
速いテンポで細かい動きの曲と、落ち着いているけれどやや哀しげなところのある曲の2曲。

7.間奏曲変イ長調
明るく歌うような旋律のインテルメッツォ。小さな宝石が煌くような輝きと優美さに溢れたとても美しい詩的な曲。

8.村人たち(子供のための小品)
ワルツで軽快に始まるけれど時々変な不協和音が聴こえる。
その後はなんとなくひょうきんというか間の抜けた雰囲気のする旋律(仕事にでも行くところなんだろうか)。
その後に続くのは、みんなで仕事をしているかのような調和のとれた旋律。
その次は昼食でも食べているんだろうか。またその次はお昼寝らしい気がする。
最後に、冒頭のワルツに戻って、みんなお家に帰りました。
この曲を聴いていると、村人たちが何をしているのか想像したくなってくる。まるで一つの物語を音楽で語っているかのような曲。
プーランクはかなり遊び心のある人に違いない。サン=サーンスの「動物の謝肉祭」もシニカルなユーモアがあってとても面白いし、フランスの作曲家はどこか洒落っ気のある人が多いのかもしれない。

9.プレスト変ロ長調
とても軽快で軽妙な曲。リズム感が抜群によく、音が運動する様が目に見えてくるかのような曲。


久しぶりに聴いたロジェのプーランク。プーランクの曲自体も素晴らしいし、ロジェのピアノも最高!
日曜の朝だけじゃなくて、午後のティータイムに紅茶とケーキで休憩しながら聴いても良いくらい素敵なアルバムです。

                                       

このCDを聴いていたら、もっとプーランクのピアノ曲が聴きたくなってきてしようがない。
コンチェルトのCDは持っているし、ロジェのピアノがこれほど良いのだから、他のピアノ独奏曲や室内楽曲が全部入っているロジェの全集で聴くのが一番だと思えてきた。

現在、手に入るピアノ曲を収録したCDは、ピアノ曲・室内楽曲全集以外に次の2種類がある。

全集のうち、CD1とCD2だけを収録した盤。
プーランク:ピアノ曲集プーランク:ピアノ曲集
(1996/01/25)
ロジェ(パスカル)

商品詳細を見る


全集のうちCD1だけを収録した盤。
Poulenc: Piano Music; Chamber WorksPoulenc: Piano Music; Chamber Works
(2008/09/02)
Pascal Roge


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