《The Art of Julius Katchen》より ~ リスト/ピアノ協奏曲第1番 

2009, 04. 28 (Tue) 20:05

リストはデモーニッシュな雰囲気や威圧的なところが感じられるし、超絶技巧の派手な曲というイメージがあって、あまり本気で聴いたことがなかった作曲家。それでも、ピアノのレッスン課題の定番の一つ「愛の夢」くらいは弾いたことはあるにはある。

アラウやツィメルマンの録音を集めていた関係でロ短調ソナタやコンチェルトのCDも持っているにはいるが、ラックの飾りと化していた。それになぜかボレットのリスト曲集まで持っている。
あちこち探して集めたカッチェンのCDの中にも、リストのコンチェルトやピアノ曲が数曲ある。
これを聴いてみると、リストとはこういう曲だったのか~といろいろ発見があって、リストとは意外と相性が良いような気がしてきた。
最近ダウンロードしたアラウのライブのプログラムにたまたま入っていたリスト(メフィストワルツ、小人の踊り)を聴くとこれも面白いし、ラザール・ベルマンの「巡礼の年」とスティーヴン・ハフのリスト曲集も手に入れたので、ここしばらくはリストの曲とお付き合いすることに。


このピアノ協奏曲の録音は、アタウルフォ・アルヘンタ指揮ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団の伴奏で1957年の録音。このディスクには、ケルテス指揮イスラエル・フィルとのグリーグのコンチェルトも収録されている。
カッチェン、アルヘンタ、ケルテスは、奇しくも3人とも早世した演奏家と指揮者。カッチェンは病気だったけれど、アルヘンタとケルテスは事故が原因。期待していた中堅の彼らを相次いで失うというのは、DECCAにとってはかなり不運な出来事だったに違いない。

The Art of Julius Katchen, Vol. 4The Art of Julius Katchen, Vol. 4
(2004/04/20)
Julius Katchen, Ataulfo Argenta, Istvan Kertesz,Israel Philharmonic Orchestra, London Philharmonic Orchestra

試聴ファイルなし

カップリングは、グリーグのピアノ・コンチェルトに加え、20歳代で録音したリストのピアノ曲(ハンガリー狂詩曲第12番、メフィスト・ワルツ第1番)、ムソルグスキーの「展覧会の絵」、バラキエフの「イスメライ」と、技巧的な曲をまとめて収録したアルバムになっている。
特にグリーグのピアノ協奏曲が素晴らしく、北欧の寒く厳しい自然やフィヨルド・氷山といったダイナミックな風景が思い浮かぶような力強くて清々しさのある演奏。

 リストのピアノ協奏曲第1番 (ピティナの楽曲解説)
第1楽章冒頭は、ややオドロオドロしげなオーケストラの演奏で始まる。でも、なぜかアルヘンタ指揮のオケの伴奏がとてもカッコよく聴こえてくる。どちらかというと、色調は明るく、リストのデモーニッシュで威圧的な雰囲気が薄い気がする。

続いて入ってくるカッチェンのピアノも、太くてやや暗めの響きでやっぱりリストだな~とか思っていると、そのうちコロッと表情が変わって、とても美しくロマンティックなピアノに。
とても軽やかなタッチで柔らかく弾いているので、技巧的な切れ味が良くわかるというタイプの弾き方ではないように聴こえるけれど、そのかわり表情がとても豊か。
主題が再度現れてくると、オケとピアノとも目が覚めたようにテンポが上がって迫力が出てくるけれど、その主題の間に叙情的な旋律が何度も挟み込まれていて、そのコントラストが面白い。

この曲は全楽章が連続して弾かれるので、いつの間にか第2楽章に。
緩徐楽章なので、主題の叙情的な旋律はとても穏やかで美しく、透明感のある響きでしっとりと旋律を歌わせたように弾くカッチェンのピアノがとても優美。
第1楽章は男性的なイメージが強かったけれど、この楽章は貴婦人のような華麗さと気品のある雰囲気。
ここはピアノのソロが多めの楽章で、こういうしっとりとした叙情的な曲想が、カッチェンのピアノによく似合っている。

第3楽章は最初は、トライアングルが鳴り響いて、ちょっとエキゾチックな雰囲気がする旋律で始まる。軽やかな遊び心のあるスケルツォ。やがて第1楽章冒頭の主題が現れてきて、これは第1楽章よりも力強くて勇壮な感じがするけれど、ラストはこのダイナミックさがとても爽やか。
アタッカでそのまま第4楽章に入るが、冒頭の旋律はどこかで聴いたことがあると思ったら、小学校の時の昼休みの構内放送に流れていた曲だったのを思い出した。
この楽章は、今までで出てきた旋律がコラージュのように散りばめられていて、とても明るく活気に満ちた雰囲気。カッチェンのピアノは、タッチも軽やかで歯切れの良いリズム感があって、終楽章に相応しい華やかさがある。ラストは冒頭の主題が再現されて、きりっとした締めくくりが鮮やか。

リストのピアノ協奏曲は、外形的に派手な俗っぽいという先入観があったけれど、ちゃんと聴いてみるとこの曲はいろんなイメージが織り込まれていて、ピアノの持つ力強さや、華やかさと繊細な美しさが味わえる。
リスト自身が技巧的なピアニストだっただけに、ピアノをどういう風に鳴らせば良いのかよくわかっていたような流麗さと美しさがあって、ショパンよりもずっと好みに合うコンチェルトだった。


 『ジュリアス・カッチェンにまつわるお話』

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