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カッチェン ~  グリーグ/ピアノ協奏曲
グリーグのピアノ協奏曲で一番好きなのが、このカッチェンの録音。
1962年、カッチェンが35歳の時の録音。ブラームスのピアノ作品全集も録音していた頃で、体力・気力・技巧とも充実したに違いない。
演奏にもそれが現れていると思うほど、北欧の自然の力強さと清澄なロマンティシズムが溢れた、雄大で爽やかなグリーグ。

伴奏はイシュトヴァン・ケルテス指揮イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団。
ケルテスとは、1960年代に入ってから、度々共演しているので相性はとても良い。
(ケルテスも、1973年にイスラエルで海水浴中に高波にさらわれて、カッチェンと同じようにわずか43歳で早世する。)

グリーグのコンチェルトをご当地オケでもないイスラエル・フィルの伴奏で録音した経緯が、カルショーの著書「レコードはまっすぐに」に少し書かれていた。
当時のDECCAは諸々の事情で、他の曲でもイスラエル・フィルと頻繁に録音をしていた。
ケルテスとカッチェンは飛行機でイスラエルへ行って録音したけれど、カルショーはイスラエルで録音することには否定的だった。
録音場所のホールも録音設備の状態も悪く、その上、当時のイスラエル・フィルは力量不足(「二流」と書いていたが)とカルショーは思っていたので。

グリーグ&シューマン/ピアノ協奏曲グリーグ&シューマン/ピアノ協奏曲
(2013/5/15)
カッチェン(ジュリアス), イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団、指揮: ケルテス(イシュトヴァン)

試聴ファイル


カッチェンの弾くチャイコフスキーはスピード感が強かったけれど、グリーグは力感と量感の方が圧倒的に強い。
テンポは速く、力強くタッチで線が太く音量も豊かなので、とてもダイナミック。
雄大な北欧の自然のパノラマ映像を見ているかのように、ノルウェーの海にそそり立つフィヨルドや、ぶつかり合う氷山のイメージが次々と浮かんでくる。
そこに北欧の自然の清々しさと透明感に溢れた詩情が融合して、人間を圧倒する自然の迫力と美しさを体感するようなスケール感と爽やかさが素敵。

第1楽章は、硬質で粒立ちの良いタッチで音がとてもクリアに聴こえるせいか、透み切った清々しさがある。
冒頭は、ピアノの力強い和音とアルペジオで始まる。
その後は柔らかなタッチで軽やかに弾いているかと思うと、鋭角的な打鍵でシャープに弾くところが交互に現われて、起伏が大きく、コントラストも強い。テンポも緩急の変化が激しく、加速するところは力強さを保ちつつ、
かなりの勢い。
緩急・静動が頻繁に交代するので、この楽章は叙情と力強さの間で常に揺れ動いている。

伴奏の音の厚みがかなりあり、カッチェンのピアノも力感・量感が強く、低音部の重みのあるタッチと響きには、底から盛り上がってくるような力強さがある。

第2楽章は打って変わって穏やかな曲想。
弱音はいつもながら柔らかく優しげな響きが綺麗。やや強めでシャープなタッチで弾くところも多く、緩徐楽章とはいえ。底流には力強さが流れている。

第3楽章の冒頭から、リズム感の良い弾むような弾力と力感のあるピアノで、テンポは相変わらず速い。
伴奏もドラマティックに盛り上がって躍動的。
展開部はとても柔らかく透明感のある響きで、ゆっくりと叙情を歌っている。この曲のなかで、最も叙情豊かに弾いているところ。
再現部に入ると、再び力強いタッチでフィナーレへ向かって一気に走り抜けるようにだんだん加速していく。
かなりテンポは速いけれど、弾力のある切れよいタッチで弾むような躍動感があり、ピアノの力強いフォルテの打鍵は音色が明るく輝きを増している。

 『ジュリアス・カッチェンにまつわるお話』

 ジュリアス・カッチェンのディスコグラフィ

tag : カッチェン グリーグ

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Author:yoshimi
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クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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