ミケランジェリ ~ ラヴェル/ピアノ協奏曲 

2009, 01. 02 (Fri) 14:44

リヒテルが自宅で友人たちを招いて新年を祝うときにかけた音楽は、ミケランジェリが弾いたラヴェルの「ピアノ協奏曲ト長調」。
ミケランジェリについては、テクニックが高度で精緻なだけでしかないと否定的だったリヒテルだが、このラヴェルのピアノ協奏曲は「ミケランジェリ最高の演奏」だと賞賛していた。
ラヴェルのこのコンチェルトは、感情的なものを捨象してできた音楽であってミケランジェリのピアニズムにふさわしいのだそうだ。

ラヴェルのピアノ協奏曲は、ミケランジェリ、ツィメルマン、カッチェン、ロジェと4種類のCDを持っているが、新年初日はリヒテルのようにミケランジェリのピアノで。
伴奏はグラチス(指揮フィルハーモニア管弦楽団。1957年の録音。古い録音のわりには、音が非常にクリア。ピアノの音がわりと前面に出ているなので、ミケランジェリの演奏を十分に楽しめる。

ラヴェル:ピアノ協奏曲&ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第4番ラヴェル:ピアノ協奏曲&ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第4番
(2002/03/06)
ミケランジェリ(アルトゥーロ・ベネデッティ)

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第1楽章から、波がきらきらとさざめくようなピアノの音に乗って、フルート(たぶん)が序奏を吹いて、やがてトランペットのファンファーレが鳴り響く華やかな曲。
しばらくゆったりとした旋律が続いたかと思うと、そろそろ走り出す気配の旋律に変わる。ここでジャズ風の旋律がちょこっと出てくるけれど、ミケランジェリのピアノはそういう雰囲気を感じさせない生真面目さがある。
ミケランジェリのピアノは、第1楽章は、かなりタッチが強めで太い音色もかなり使っているので、リズムはそんなに軽快ではないと思うが、音色や響きはいろいろ変えていて、耳には非常に心地よい。高速のトリルも粒がそろってとても美しく、滝が流れるように流麗なレガート。
ラストは管楽器が下降するスケールを吹くが、ここはなんとも人を食ったようなふざけた感じがするところ。

第2楽章は、ミケランジェリの透明感のある鋭く線の細い響きが、とてもよく映えていて、この上なく儚げで美しい。
オーケストラの伴奏があまり前面に出てこないので、オケの背後にピアノが回った時にカスケードのような旋律を弾いていても、ピアノの音色がとてもクリアに聴こえる。
カッチェン&ケルテスの演奏で聴くと、オケの響きが厚くて、ピアノの音がそれに溶け込むようなところがあったので、このCDでは特にピアノの音が綺麗に聴き取れる感じが強い。
この楽章はとても美しい旋律が流麗に流れているけれど、その背後にあるはずの感傷や感情めいたものが希薄な気がする。ミケランジェリのピアノは美しいけれど、淡々としているからかもしれない。

第3楽章は有名な”ゴジラ”の旋律が出てくるところ。
ラヴェルを尊敬していたゴジラの作曲者の伊福部昭が、jこの曲の旋律を転用したために、日本人が聴くと”ゴジラ”のテーマソングを連想してしまう人が結構いるようだ。聴く人の年齢にもよるが、私にも”ゴジラ、ゴジラ”と聴こえてきてしかたがない。
この楽章は、まるで音が乱舞するかのように、音だけが縦横無尽に動き回っている。
ミケランジェリが軽くて線の細い音で細かいパッセージを高速で弾くので、軽やかな疾走感が際立っている。とにかく指が良く回っているのが聴いていて想像できそうなくらい、鮮やかなピアノだった。
そしてラストは唐突にやってくる。面白い終わり方だと思う。

ミケランジェリの数ある録音のうちでも、このラヴェルのピアノ協奏曲だけは何度聴いても美しく精緻の極みのような演奏で、ミケランジェリのピアノが好きではないにしても、その素晴らしさはよくわかる。
この曲を聴くと、どこかしらお酒の酔いが回っているようなまどろみや高揚感をいつも感じるのは気のせいかもしれないけれど、新年を祝うにはちょうど良い曲かもしれない。

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