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吉松隆/交響曲第2番「地球(テラ)にて」
新しい年を迎えたときは、世界が広がるような曲を聴くのが良いかなと思って、吉松隆の交響曲第2番「地球にて(At Tera)」を久しぶりに聴くことに。

「地球にて」がタイトルだけど、いつも「地球へ(テラへ)」といい間違えてしまう。
これは、竹宮恵子のSF漫画とタイトルが似ているから。「地球へ(テラへ)」はSFまんがの中でも秀作(だと思っている)で、昔は繰り返し読んだ作品。

吉松隆は、交響曲第2番でレクイエムを作ろうしていたが、ひとつは死んだ猫たちの(理由はよくわかりません)、もうひとつは人間と地球についてのレクイエムとしてだったそうだ。
副題の「地球(テラ)にて」は、"手紙の最後に「東京にて」と書くような一種の署名”であって、人間と地球について考えたことと、アジアからアフリカに至る音の素材を混在させたことがその理由だという。
詳しくは、作曲者本人による曲目解説に書かれている。

吉松隆の「地球(テラ)にて」は、CHANDOSからリリースされている。
当時のCHANDOSの代表者が、「サイバーバード協奏曲」(サキソフォーン協奏曲)を聴いて感動し、彼の交響曲作品を全てCHANDOSからリリースすると決めたからだ。
1998年にCHANDOSと専属契約を締結。日本人作曲家として世界的に名が知られるようになった。

Yoshimatsu: Symphony No. 2; Guitar Concerto; Threnody to Toki, Op. 12Yoshimatsu: Symphony No. 2; Guitar Concerto; Threnody to Toki, Op. 12
(1996/03/19)
Peter Dixon、

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演奏は、藤岡幸夫指揮BBCフィルハーモニック管弦楽団で、CHANDOSの吉松作品はいつも演奏している。
「地球にて」は以下の3楽章からなり、それぞれ地域性を感じさせる旋律と音で構成されている。

1.挽歌...東からの(Dirge ... from the East)
「アジア風の旋法と旋律の堆積による挽歌。冒頭のチェロによる悲歌を核にして、様々な歌や祈りや舞踏が通り過ぎてゆく。」

冒頭から弦楽器の低く不気味な音で始まる。重苦しいが美しくもある重層的な弦の響きは「朱鷺に寄せる哀歌」を思い出させる。吉松隆が作った曲だと刻印されたような旋律と響きである。
やがてピアノが途切れ途切れに切々と歌い始める。すると、アルヴォ・ぺルト(エストニアの現代音楽作曲家)の祈りの音楽に似ている(と私は感じる)旋律が聴こえてくる。
次は弦楽器たちが激しく切迫感のある旋律を奏で始める。一気呵成にオーケストラ全体が鳴り響いて、突如終末を迎える。
再びぺルトの音楽に似た旋律が現れ、やがて尺八とチェロが次々に現れ、やがて静かに消え去っていく。最後は打楽器とオーケストラによる踊りのような旋律が登場してフェードアウトする。
「アジア風の旋法と旋律の堆積による挽歌」というとおり、アジア的旋律と楽器が入れ替わり登場してくるという(折衷的というべきかも)、16分以上をかけた最も長い楽章である。
水の雫がこぼれ落ちてくるようなややウェットな雰囲気がする楽章である。
長いといっても曲が次々と展開していくので、単調さはなく飽きることなく聴ける。

2.鎮魂歌...西からの(Requiem ... from the West)
「ヨーロッパ風の死者のためのミサ曲の形(Introitus,Kyrie,Offertorium,Sanctus,Agnus Dei,Libera Me)をもつ鎮魂歌。」

冒頭から、弦楽器が柔らかく儚げで消えて亡くなりそうな旋律を奏でるが、ここも「朱鷺に寄せる哀歌」の冒頭に少し似ている。
形式はミサ曲の形をとっているらしいが、旋律自体は西洋的というよりは、吉松隆の独特の感性で作られた日本的な音が感じられる。

3.雅歌...南からの(Canticle ... from the South)
「アフリカ風の律動による軽やかな雅歌。延々と繰り返されるリズム細胞の上でアレルヤの歌声が増殖してゆく。」

これはかなりエキゾチックな旋律とリズム。これが通奏低音のように流れている上を別の旋律が時々現れては消え、やがて賛歌を歌うように高揚していく。
まるでロックかポップスのような感じのする賛歌で、壮大さもあり堂々とした終幕を迎えるというカッコよく高揚感に溢れた楽章である。(やや終わり方が素っ気無いような気もしないではないが...。)
なぜか乾燥した大地に風が吹いているかのような感じがする楽章である。


この曲は、クロスオーバー的、マージナル的、折衷主義的、etc....と、どういう音楽と言えばよいのかわからないが、反現代音楽であろうとする初期の頃からの創作意欲と気概が強く感じられるし、曲の内容の面白さもあって、彼の交響曲の中では最も好きな作品。
やはり最長の「東方からの」第1楽章が内容的にも一番充実していると思うが、第3楽章の終幕への盛り上がり方も好きなところ。
現代音楽的な難解さは全くないし、異なった音楽文化の旋律が組み込まれているので、かなり面白く聴ける曲だと思う。

この曲は、「北からの」スケルツォを追加して、4楽章構成に改訂されている。
作者のホームページの日記には、”「なんで(スケルツォ楽章を付け足すなんて)余計なことをするんですか?」と言う声も若干。でも、やっぱり「東・西・南・北」&「起・承・転・結」がそろった嬉しさは親(作曲者)にとって格別。”と記されている。

たしかに、3楽章構成だと北が抜けているなあと思っていたので、「地球にて」というからには、構成という面では4楽章構成の方が良いには違いない。
問題は改訂版のCDが出ていないこと。コンサートにでも行かないと聴けないし、そもそもこの曲を演奏するコンサートがそう簡単には見つからないのが難点である。

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