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気ままな生活 伊福部昭/ピアノと管弦楽のためのリトミカ・オスティナータ、SF交響ファンタジー第1番

2009.01/04(Sun)

伊福部昭/ピアノと管弦楽のためのリトミカ・オスティナータ、SF交響ファンタジー第1番

ラヴェルのピアノ協奏曲を聴いていて、かの有名な”ゴジラ”のテーマが出てきたので、その作曲者である伊福部昭もたしか交響曲を作曲していたのを思い出した。

NAXOSは、日本人作曲家シリーズを展開していて、これがなかなか充実している。
そのシリーズの伊福部昭のCDを探してみると、やっぱりありました、「SF交響ファンタジー第1番」が。
早速聴いたけれど、やっぱりゴジラのモチーフが組み込まれていて、懐かしいメロディが聴こえてくる。幼少のみぎりには良くゴジラの映画を見ていたものだ。
この曲は、東宝(東映かも)の怪獣映画のサントラを聴いているような気分がしてくる交響曲なので、立派なクラシック音楽を期待する人には向いていない。

クラシック音楽的なものを期待するのであれば、このCDにカップリングされている「シンフォニア・タプカーラ」と「ピアノと管弦楽のためのリトミカ・オスティナータ」が良い。
両方とも調性音楽の範囲の曲なので難解さはなく、曲自体は聴きやすい。
ただし、ミニマルミュージック的なところはあって、まるで”民族主義的で力強い”フィリップ・グラスの音楽を聴いているような気分がしてくる。ミニマル・ミュージックやグラス(それに加えてバルトーク)が苦手な人には合わないかもしれない。

伊福部昭:シンフォニア・タプカーラ伊福部昭:シンフォニア・タプカーラ
(2004/12/01)
ロシア・フィルハーモニー管弦楽団

試聴する


入手しやすいのはNAXOS盤。ピアノがエカテリーナ・サランツェヴァ、ドミトリ・ヤブロンスキー指揮ロシア・フィルハーモニー管弦楽団。

「シンフォニア・タプカーラ」

「シンフォニア・タプカーラ」のタイトルは、アイヌ語の「タプカーラ」のことを指し、これは「足を踏みしめる」ことで悪霊を追払い良霊を招くと言われている。
アイヌの踊り“タプカーラ”は、しっかりと足を踏みしめて、取り憑かれたように力強く踊るという。
確かに、この曲は地を踏み鳴らすようなダイナミックで重厚な曲ではあるが、土俗的なものを感じさせる。特に第3楽章は踊り続けるかのように同じようなモチーフが繰り返し現れてくる。
こういう土俗性のある音楽は、他の日本人作曲家には見られない異質なものだと思うが、それが伊福部らしいところだろうか。

「ピアノと管弦楽のためのリトミカ・オスティナータ」

「リトミカ・オスティナータ」は執拗に反復する律動的な音楽という意味。
伊福部が満州へ行ったときに見た寺院の壁の無数の仏像が持つ圧倒的な迫力に触発されて作曲した。その名の通り同じような旋律とリズムが、姿形を変えては反復されて現れてくる。

伊福部自身による解説では、2つの異なった要素の結合(韻文の持つ奇数律動をモチーフとし、6つの音しかない六音音階を旋律とした)を、執拗に反復することに依って、吾々の内にある集合無意識の顕現を意図したのだと言っている。この制約下で作曲したのは、レオナルド・ダ・ヴィンチの『力は制限に依って生まれ、自由に依って滅ぶ』という言葉への憧れがあったからだそうだ。

この曲に関しては、1971年に録音された小林仁のピアノと若杉弘指揮読売日本交響楽団の演奏が名演だと言われている。
確かにその通りで、打楽器のように弾くピアノの鋭さ、オーケストラの一糸乱れぬアンサンブルに加え、スピード感、力感、演奏の深みといい、NAXOS盤とは比べ物にならないほど素晴らしい。

現代日本の音楽名盤選(5)現代日本の音楽名盤選(5)
(1995/09/21)
読売日本交響楽団


※探してみるとニコニコ動画でこの録音が登録されていた。

冒頭はホルンのゆったりとした響きではじまり、ピアノがポロンポロンと単音で入ってくるが、すぐにピアノが加速し、オケが徐々に加わって、まさに戦闘態勢に入ったかのような荒々しく激しいリズムと旋律が怒涛の如く挑みかかってくるような曲である。
やや陰鬱さのある旋律に、独特のリズムや拍子が加わっていて、これがとても面白いし、時折バックで鳴るハープが場違いなほどに華麗。ちょっとだけゴジラのモチーフも出てきたりする。
ピアノパートは、バルトークのピアノ協奏曲のように打楽器的に弾かれる場面が多くて、フォルテで弾き続けるにはかなりの体力がいる。下手なピアニストが弾くと、終盤まで持たずに崩れてしまうんじゃないかと思う。
頻繁に拍子が変わったり、ピアノとオケの拍子とリズムをぴったりとあわせるのに苦労するといういろいろと難所の多い曲。
この難しい曲を、極めて速いテンポで演奏しているところが凄いが、全く乱れのないアンサンブル、鋭く攻め立てるような激しさと力強さのある演奏は、演奏者たちの気合が伝わってくるかのような迫力である。
小林仁のピアノが非常に良くて、力強く切れの良い打鍵と鋭いリズム感があり、音もくっきりと立ち上がって美しく、最後まで崩れずにオケとぴったりと合っている。

中間部では、緩叙楽章のようにゆったりとした旋律が現れてくる。
エキゾチックでしっとりとしたアジア的抒情というべきようなものが流れていて、非常にストイックな美しさで貫かれている。まるで仏教寺院の中に佇んでいる時に感じられるような宗教的な荘厳さと厳粛さを感じる。

「リトミカ・オスティナータ」には、日本というよりもアジア的な風土が感じられるし、どことなく曼荼羅的なものを想起させる気がする。
作曲家自身が「吾々の内にある集合無意識の顕現を意図」したという通りなのかもしれない。
NAXOS盤を聴いた後に、小林/若杉&読響盤を聴くと、これでもかこれでもかと迫ってきて圧倒するような力強さがある。これを上回るような演奏がはたして出てくるんだろうかとさえ思う。
何気なく聴き始めた曲だったけれど、人間の中に潜んでいる原始的な力を呼び覚まし、湧き上がらせようとするかのような凄い曲。
ここ最近聴いた曲のなかでは、もっとも生気と力強さと緊迫感に満ちた曲であり、演奏だった。
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