ネッド・ローレム/ピアノ協奏曲第2番 

2009, 01. 15 (Thu) 12:11

ネッド・ローレムのピアノ協奏曲第2番は、若い頃の彼がパリに住んでいた1951年に作曲された。
この曲は友人であるピアニストのジュリアス・カッチェンのために書かれたもので、1954年にカッチェンのピアノ、ジャルディーノ指揮フランス国立放送管弦楽団の伴奏で初演された。

初演の評判は良かったが、なぜか半世紀近くも埋もれたままになっていたという曲である。
この曲は、カッチェンのピアノを念頭においているだけあって、ラヴェル、ラフマニノフ、ガーシュインばりのヴィルトオーゾ的な技巧とロマンティックな曲想に加えて、20世紀初頭のアメリカ的な音楽センスも取り入れられている。
個人的な好みでは、何度も聴きたくなるほど素敵な曲だと思う。

この曲を録音したCDは、探し回って見つけたNAXOSのこの1枚のみ。
イギリスの若手ピアニストであるサイモン・ムリガンのピアノ、ホセ・セレブリエール指揮ロイヤル・スコティッシュ・ナショナル管弦楽団の伴奏。2006年8月の世界初録音盤。

Rorem: Piano Concerto No. 2; Cello ConcertoRorem: Piano Concerto No. 2; Cello Concerto
(2007/09/25)
Jose Serebrier,Royal Scottish National Orchestra, Simon Mulligan

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第1楽章 Somber and Steady
冒頭はピアノ・ソロがコラールのような序奏をゆっくりと弾いているが、それから急に盛り上がりオケとピアノが明るくアレグロで協奏し始める。ここはなかなかダイナミック。旋律は明るい色調で軽妙。
まるでラヴェルのピアノ協奏曲を聴いているような気分になる。
中間部は、ピアノとクラリネットなどの管楽器が安らかに対話するかのような美しい旋律。やがて勢いのよいアレグロに戻るが、すぐに長大なカデンツァに入る。
このカデンツァは、華やかだけれど透明感のある叙情溢れる旋律。ロレムが、技巧に優れて抒情的な表現力も豊かなカッチェンのために書いた曲だというのも良くわかる。
カデンツァの後にオーケストラとの掛け合いが速いテンポで再開するが、この楽章ではテンポが頻繁に変わるし、曲想も緩急のメリハリが良くきいている。オーケストラ伴奏も色彩感十分。15分の長い楽章でも起伏が多くて楽しく聴ける。
時々ラベルのピアノ協奏曲で聴いたようなモチーフがちらっと聴こえてくるのが面白い。

第2楽章 Quiet and Sad
”静かで哀しく”とある通り、静寂さと澄み切ったような哀感のある叙情的な楽章。
ロマン派の音楽とは違って全くウェットなところはなく、ラヴェルの音楽のような透明感のあるクールな美しさがある。
これが現代音楽のピアノ協奏曲だと言われても、印象主義的な音楽のようにしか聴こえないかもしれない。
時折、感情が湧き上がってくるかのような激しさの見えるところがあり、ピアノの小さなカデンツァでもつかの間の高揚があるが、やがてそれも収束し静かでどこかしら明るさのある哀感をおびた旋律へと回帰していく。

第3楽章 Real Fast!
冒頭から指示通り速いテンポでオーケストラとピアノが協奏していくが、ピアノは主に中音域から高音域で主旋律を弾いているので、線が細くて透明感のあるピアノの響きが美しく、とても軽やか。
”Real Fast!”にしてはテンポがやや遅く、もっとスピード感が欲しい気がするが、そうすると細かい音がつみあがったパッセージでついて行けなくなるのかも。
この楽章では、ラヴェル的な雰囲気はすっかり消え去り、ガーシュウィン的な雰囲気に変わっている。
ピアノが弾く細かい高速のパッセージはとても軽妙でどことなく洒落たユーモアを感じさせる。
ガーシュウィンのピアノ協奏曲のように、管楽器があちこちで突発的に騒ぎ出して賑やかだし、ラストでの管楽器での締めくくり方もアメリカの音楽的な雰囲気。
この楽章のモチーフやリズムは、ガーシュウィンをイメージさせるようなジャズ風なところがあって、20世紀のアメリカ音楽の協奏曲らしい楽章である。

この曲は、ラヴェル的なるものとガーシュウィン的なるものを併せ持った面白いところがある。といっても、ラヴェルのピアノ協奏曲はジャズ音楽の影響を多少なりとも受けているし、ガーシュウィンはクラシック音楽としてのピアノ協奏曲も作曲していたので、よく考えればそれほど不思議なことでもない。
これが半世紀以上も埋もれていた理由はよくわからないけれど、ラヴェルとガーシュウィンを折衷したような、現代音楽らしくない音楽なので、楽壇ではあまり評価されなかったのかもしれない。
(ラヴェル的ではあるがラヴェルを超えず、ガーシュウィン的ではあるがガーシュウィンを超えず...というところがある気はするが...。)

第3楽章はもう少しスピード感と躍動感が欲しいとは思うけれど、それでもラヴェルとガーシュウィンのコンチェルトは両方とも好きなので、この曲はまた聴こうと思ったくらい、かなり好みに合う曲。
初演はカッチェンがピアノを弾いたそうだけれど、ライブ録音が残っていないのはとても残念。


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