コチシュ ~ ラフマニノフ/ピアノ協奏曲第2番、ヴォカリーズ 

2009, 01. 24 (Sat) 17:32

ずっと昔に買ったコチシュのCDがCDラックのなかにあるのを発見。バルトークのCDだと思ったが、なぜかラフマニノフのピアノ協奏曲第2番と第3番、それにヴォカリーズだった。たぶんピアノ・ソロのヴォカリーズが聴きたかったのだと思う。
伴奏はエド・デ・ワールト指揮サンフランシスコ交響楽団。録音年が載っていないという困ったCD。おそらく1985年頃だと思う。

このところ、この第2番のコンチェルトばかり聴いている。この曲は演奏者によって随分雰囲気の変わる曲なので、いろんなピアニストの演奏を聴くのが面白い。

コチシュの演奏は、速いテンポでほどよい力強さがあり、技巧鮮やかにすっきりとしたフォルムで叙情に深くのめりこまずに弾いていく。
演奏時間は、異常に速いカッチェン&ショルティ盤よりもまだ速いが、なぜか速さを全く感じさせない。カッチェンは歌うところはゆっくりとしたテンポで歌い、突進するときは異常に速くなるが、コチシュのピアノは、激情に駆られて突進するなどということは全くなく、テンポも感情表現も極めて冷静にコントロールされていると思う。
かなりの速いテンポにも、テクニックの乱れは全くなく、一音一音が明瞭で非常に安定している。
そういう点では安心して聴けるが、物足りなさもあって、深い情趣や白熱した演奏を求める人にはあっさりしすぎている感はある。

ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番
(2005/06/22)
コチシュ(ゾルタン)

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(私の保有盤は現在は廃盤。これは、ピアノ協奏曲第3番の代わりに、パガニーニ狂詩曲をカップリングした盤)

テンポ設定や音楽の作り方は、ラフマニノフの自作自演盤とかなり似た趣きがある。
ラフマニノフの演奏時間も極めて短く合計で30分台。
自作自演盤は、軽やかな音色で甘い旋律はサラリと弾き、第3楽章はかなり速いテンポで、フォルテのスケールやアルペジオでも、力強さを誇示することなくスイスイと弾いている。白熱した激情の代わりに清々しい抑制されたロマンティシズムが漂っている。
ラフマニノフ自身はこういう音響空間や音楽の流れを意図していたのかと発見するところがあって、自作自演盤はとても面白い。(ただし、ラフマニノフがわざと抑制的に演奏しているというツィメルマンの解釈もある。)
多くのピアニストはラフマニノフ自身の演奏とは違って、叙情と激情に揺れるかのようにドラマティックな演奏をしているのが良くわかる。
そういう点では、コチシュの演奏はこのラフマニノフの演奏に近いものだとは思う。

ラフマニノフ:自作自演~ピアノ協奏曲第2番&第3番ラフマニノフ:自作自演~ピアノ協奏曲第2番&第3番
(2007/11/07)
ラフマニノフ(セルゲイ)

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第1楽章は、コチシュのピアノは冒頭から速めのテンポでわりと軽やか。叙情的な旋律を弾くが、ここも情念に深くのめりこまずに、粒立ちの良い透明感のあるタッチで、表層を美しく流れるリリカルなピアノ。
力強さはあるが、強弱がよくコントロールされているので突出したところはない。全体的に速いテンポなので、終盤近くでもそれほどテンポが上がっている感じがせずに安定感のある演奏。

第2楽章はそれほど遅いテンポはとらず、やわらかいタッチで穏やかに、さりげなく歌っている。

第3楽章は、カッチェン&ショルティ盤よりも演奏時間は短いが、コチシュは、叙情的な旋律を歌うところをそれほどテンポを落とさずにあっさりと弾いているため。
4分頃から加速していくが、ここはカッチェン並かそれ以上に速い。弾き方が似ている気がするが、これだけの速いテンポだとそう違う弾き方もできそうにはないだろうし。
快速テンポでもテクニックの崩れもなく、切れの良いタッチでどんどん弾き進んでいくのは爽快だが、カッチェンと違うのは、激情的な盛り上がりを感じさせないところ。

力技で激情に走ることもなく、深い叙情にのめりこむこともなく、抑制されたリリシズムが美しくはあるが、やはりもっと濃さが欲しくなってくるところはある。

最後に収録されているコチシュ自身の編曲によるピアノ独奏版「ヴォカリーズ」。
歌曲版も美しいが、ピアノ・ソロの「ヴォカリーズ」もそれにひけをとらないくらい美しい。
コチシュのピアノは、やや霞のかかったような夢幻的な響きがして、哀感よりもほのかな優しさが漂っているように聴こえる。これはとても素敵なヴォカリーズ。コチシュの編曲については賛否両論あるようだけれど、演奏自体は良いものだと思います。

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