吉松隆/ソプラノ・サクソフォン協奏曲「アルビレオ・モード」
吉松隆のソプラノ・サクソフォン協奏曲「アルビレオ・モード」(Op.93)は、日本のサクソフォン奏者須川展也の委嘱により作曲されたもの。
CHANDOSから昨年5月にリリースされた須川展也の最新アルバムが初録音となる。伴奏は佐渡裕指揮BBCフィルハーモニック管弦楽団。
作曲者自身の作品解説はこちら(<協奏曲>タブにあります)
初めは、前作サイバーバード協奏曲の〈動〉に対して〈静〉、全編ピアニシモでアダージョという構想だったが、クール&ビューティな〈ガルバレク・モード〉と、ホット&ディープな〈コルトレーン・モード〉の2章仕立てに転換。
その二重性と二連性を象徴するものとして、白鳥座のβにあたる二重星〈アルビレオ〉にイメージが収斂して行ったという。
どこかで聴いたことのある名前だと思ったら、宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」に<アルビレオの観測所>というのが出てくるのだった。
クール&ビューティの第1章は〈トパーズ〉、ホット&ディープの第2章は〈サファイア〉。命名も洒落ている。
吉松隆の作品解説はいつも面白い。抽象的な概念と詩的なイメージとが連結されて、それを音符に移し変えると、彼の美しい音楽が聴こえてくる。
ソプラノ・サクソフォン協奏曲『アルビレオ・モード』 Op.93
吉松隆の協奏曲の新作を聴くのは久しぶり。チェロ協奏曲の「ケンタウルス・ユニット」以来だろう。
最近は室内楽の作品が多いが、交響曲や協奏曲の方が作品自体のスケールが大きくて面白いし、彼の独特の音色と響きが聴こえてきて楽しい。
第1章〈トパーズ〉は、冒頭から夢の中にいるような透明感のある響きと旋律で始まる。弦パートは彼のトレードマークのような旋律と音色で、ハープとパーカッション(それも3つ)も加わって、この響きの美しさにはうっとりとする。
ソプラノ・サックスの音色は、クラリネットみたいでとても心地よい。オーケストラの伴奏も、いろんな楽器が伴奏に入ってくるが、音色や響きやリズムも変わっていくところが面白い。
クール&ビューティというコンセプトどおり、この楽章は静謐さと夢を見ているような幻想的な雰囲気がしてとても美しい。冬の寒い夜にはとてもよく似合う音楽。
調性音楽とはいえ、どこかしらズレのようなものがあって、やはり現代の音楽らしさは消せない。なぜかブリテンの曲を連想してしまう。
ホット&ディープの第2章は〈サファイア〉。ホットといっても単純に白熱する楽章というわけではない。ソプラノ・サックスが旋律と伴奏に動きと厚みと不協和が徐々に増していき、一度は飽和状態で崩壊したように拡散していくが、こんどはサックスがリズム感よくあちこち動き回っていくが、オケが乱れ気味の音でかき乱すなかを、ついには尺八のような音色と響きで叫びだす。
サックスは再び静かな旋律に戻って、ピアノやパーカッションが鳴らすリズムに乗って、軽やかで楽しそうに動きまわる。とても洒落た雰囲気で、旋律と響きには品がある。と思ったら、また尺八の如く、つぶれたような音で叫びだす。そしてラストへ向かって静けさへと回帰して終える。
この曲は旋律よりも、音色や響きの美しさとそれが次々に展開していくのを楽しむ曲。旋律自体は印象にあまり残らず、ソプラノ・サックスや伴奏で存在感のある楽器の音色と響きが印象的だった。
本多俊之/コンチェルト・デュ・ヴァン~風のコンチェルト~(世界初録音)
本多俊之はサックス奏者であり作曲・編曲もする。彼の曲は初めて聴くが、映画・CMなどのポップス系の音楽を手がけている。「風のコンチェルト」もポップな感じがして、非常に聴きやすい曲。
第1楽章は、ソプラノ・サックスの背後に木管・金管がいろいろ登場してきて、とても軽妙でユーモアを感じさせる。第2楽章は、一転して落ち着いた、やや気だるい雰囲気のある旋律。第3楽章は躍動感と力強さがあって、いろんな風があちこちから吹いてきてからみあっているような曲。
全体的に、曲自体に音色・響きの変化やバリエーションが乏しくて、やや平板な感じがする(演奏ではなく作曲の問題)。
コンチェルトというので、格式ばって作ったようなところがあるけれど、もっとポップなところを出した方が良いと思えた曲。
ジャック・イベール/11の楽器のための室内小協奏曲
第1楽章は動きのある旋律と色彩感とリズム感のある伴奏。主旋律はソプラノ・サックスが吹いているが、伴奏がなかなか聴かせる。第2楽章は小休止的にラルゲットの曲がはさまれて、第3楽章は再び軽快で明るい色調の曲。フランス音楽らしい華やかさもあって、聴いていてとても楽しい曲。
非常に手馴れた感じで作った感じがするのは、さすがにイベールらしい。
ラーシュ=エリク・ラーション/サクソフォン協奏曲
ラーシュ=エリク・ラーションは1908年生まれのスウェーデンの作曲家。現代音楽のカテゴリーには入るが、作風は折衷的。
このサクソフォン協奏曲も前衛性の強い曲ではない。第1楽章こそ現代音楽的な旋律と作りを感じさせ、イベールのような耳障りの良さはないが、第2楽章の美しいアダージョや第3楽章の軽快なスケルツァンドでは、古典音楽やロマン派音楽に類したような旋律が聴こえてくる。
ソプラノ・サックスなので音色が心地よかったので、最後までどうにか聴き終えた。ピアノの音なら1日中聴いても飽きることは全くないけれど、いくら聴きやすい曲が多いとはいえ、一度に4曲も現代のサクソフォン協奏曲を立て続けに聴くのは、やはり疲れるものがある。
CHANDOSから昨年5月にリリースされた須川展也の最新アルバムが初録音となる。伴奏は佐渡裕指揮BBCフィルハーモニック管弦楽団。
作曲者自身の作品解説はこちら(<協奏曲>タブにあります)
初めは、前作サイバーバード協奏曲の〈動〉に対して〈静〉、全編ピアニシモでアダージョという構想だったが、クール&ビューティな〈ガルバレク・モード〉と、ホット&ディープな〈コルトレーン・モード〉の2章仕立てに転換。
その二重性と二連性を象徴するものとして、白鳥座のβにあたる二重星〈アルビレオ〉にイメージが収斂して行ったという。
どこかで聴いたことのある名前だと思ったら、宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」に<アルビレオの観測所>というのが出てくるのだった。
クール&ビューティの第1章は〈トパーズ〉、ホット&ディープの第2章は〈サファイア〉。命名も洒落ている。
吉松隆の作品解説はいつも面白い。抽象的な概念と詩的なイメージとが連結されて、それを音符に移し変えると、彼の美しい音楽が聴こえてくる。
![]() | Nobuya Sugawa Plays Honda, Yoshimatsu, Ibert & Larsson (2008/05/27) Nobuya Sugawa、 試聴する |

吉松隆の協奏曲の新作を聴くのは久しぶり。チェロ協奏曲の「ケンタウルス・ユニット」以来だろう。
最近は室内楽の作品が多いが、交響曲や協奏曲の方が作品自体のスケールが大きくて面白いし、彼の独特の音色と響きが聴こえてきて楽しい。
第1章〈トパーズ〉は、冒頭から夢の中にいるような透明感のある響きと旋律で始まる。弦パートは彼のトレードマークのような旋律と音色で、ハープとパーカッション(それも3つ)も加わって、この響きの美しさにはうっとりとする。
ソプラノ・サックスの音色は、クラリネットみたいでとても心地よい。オーケストラの伴奏も、いろんな楽器が伴奏に入ってくるが、音色や響きやリズムも変わっていくところが面白い。
クール&ビューティというコンセプトどおり、この楽章は静謐さと夢を見ているような幻想的な雰囲気がしてとても美しい。冬の寒い夜にはとてもよく似合う音楽。
調性音楽とはいえ、どこかしらズレのようなものがあって、やはり現代の音楽らしさは消せない。なぜかブリテンの曲を連想してしまう。
ホット&ディープの第2章は〈サファイア〉。ホットといっても単純に白熱する楽章というわけではない。ソプラノ・サックスが旋律と伴奏に動きと厚みと不協和が徐々に増していき、一度は飽和状態で崩壊したように拡散していくが、こんどはサックスがリズム感よくあちこち動き回っていくが、オケが乱れ気味の音でかき乱すなかを、ついには尺八のような音色と響きで叫びだす。
サックスは再び静かな旋律に戻って、ピアノやパーカッションが鳴らすリズムに乗って、軽やかで楽しそうに動きまわる。とても洒落た雰囲気で、旋律と響きには品がある。と思ったら、また尺八の如く、つぶれたような音で叫びだす。そしてラストへ向かって静けさへと回帰して終える。
この曲は旋律よりも、音色や響きの美しさとそれが次々に展開していくのを楽しむ曲。旋律自体は印象にあまり残らず、ソプラノ・サックスや伴奏で存在感のある楽器の音色と響きが印象的だった。

本多俊之はサックス奏者であり作曲・編曲もする。彼の曲は初めて聴くが、映画・CMなどのポップス系の音楽を手がけている。「風のコンチェルト」もポップな感じがして、非常に聴きやすい曲。
第1楽章は、ソプラノ・サックスの背後に木管・金管がいろいろ登場してきて、とても軽妙でユーモアを感じさせる。第2楽章は、一転して落ち着いた、やや気だるい雰囲気のある旋律。第3楽章は躍動感と力強さがあって、いろんな風があちこちから吹いてきてからみあっているような曲。
全体的に、曲自体に音色・響きの変化やバリエーションが乏しくて、やや平板な感じがする(演奏ではなく作曲の問題)。
コンチェルトというので、格式ばって作ったようなところがあるけれど、もっとポップなところを出した方が良いと思えた曲。

第1楽章は動きのある旋律と色彩感とリズム感のある伴奏。主旋律はソプラノ・サックスが吹いているが、伴奏がなかなか聴かせる。第2楽章は小休止的にラルゲットの曲がはさまれて、第3楽章は再び軽快で明るい色調の曲。フランス音楽らしい華やかさもあって、聴いていてとても楽しい曲。
非常に手馴れた感じで作った感じがするのは、さすがにイベールらしい。

ラーシュ=エリク・ラーションは1908年生まれのスウェーデンの作曲家。現代音楽のカテゴリーには入るが、作風は折衷的。
このサクソフォン協奏曲も前衛性の強い曲ではない。第1楽章こそ現代音楽的な旋律と作りを感じさせ、イベールのような耳障りの良さはないが、第2楽章の美しいアダージョや第3楽章の軽快なスケルツァンドでは、古典音楽やロマン派音楽に類したような旋律が聴こえてくる。
ソプラノ・サックスなので音色が心地よかったので、最後までどうにか聴き終えた。ピアノの音なら1日中聴いても飽きることは全くないけれど、いくら聴きやすい曲が多いとはいえ、一度に4曲も現代のサクソフォン協奏曲を立て続けに聴くのは、やはり疲れるものがある。
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