*All archives*



カッチェン《ブラームス:ピアノ作品全集》より (2)パガニーニの主題による変奏曲とフーガ
ブラームスのピアノ曲でも難曲中の難曲である「パガニーニの主題による変奏曲とフーガ」。
パガニーニバリエーションは、楽譜を見ただけでも実にオソロシイ曲。これを音で聴くと本当に凄まじいものがある。これを聴いた後は、明るく優しいヘンデルバリエーションを必ず聴きたくなる。

このパガニーニバリエーションが、難攻不落の城のようにいかに技術的に困難を極める曲か、少しは垣間見れる運指法についての解説が載っている。
これがなかなか面白い。ピアノを弾く人ならよくわかると思う。まるでピアニストの指を痛めるために作ったような危険極まりない曲です。

パガニーニバリエーションは、一番初めに聴いたのがミケランジェリの1948年録音(EMI盤)。
次にキーシン、カッチェン(1958年、1962年)と3人のピアニストで聴いている。聴き比べると、それぞれの個性が良く出ていて面白い。
                              

3人のピアニストの演奏の特徴をいえば、ミケランジェリの演奏は技術的な安定感と切れの良さがあり精密。高速でフォルテで移動するときでもタッチは軽やか。どんなに高速でも音の粒立ちがよく、粒も見事なくらいきれいに揃っている。ルバートはほとんどかけず正確な拍子とリズムで弾く変奏が多い。
カッチェンやキーシンよりも若干テンポが遅い変奏もあるが、どの変奏でも技術的なコントロールが完璧。第4変奏は、高速トリルをしながらもたついてしまう演奏がときどきあるが、ミケランジェリは速いテンポでも軽やかに整然と弾く。

ミケランジェリの演奏では、このスタジオ録音でもライブ録音でも、なぜか変奏を一部カットし(1巻・2巻の第9・第14変奏)、変奏の順番も入れ替えている。(楽譜を見ながら聴くときにちょっと面倒)
叙情表現は3人の中で一番淡白。激情的な変奏でもそれほどフォルテで強打することはなく、抑制のきいた冷静な弾き方をする。濃密な表現のキーシンよりも品の良い繊細さはあると思うが、ブラームスにしては万事あっさりとした表現。こういう表現を好む人もいるとは思うが。
ゆったりと詩情を歌うような変奏でも、テンポをそれほど落とさずにさらっと弾いている(1巻第11・12変奏をカッチェンと聴き比べると良くわかる)。2巻第4変奏だけが、なぜか非常に遅いテンポでささやくように静かに柔らかく弾いている。
全体的にはメカニックの完璧さと抑制された表現が強く印象に残る。録音音質がもっと良ければ、音色や響きの細かなバリエーションがもっとよくわかっただろうとは思う。

Schumann: Carnaval; Brahms: Schumann: Carnaval; Brahms: "Paganini" Variations; Bach-Busoni: Chaconne
(2004/01/23)
Johann Sebastian Bach、Johannes Brahms,etc.

試聴する


ワルシャワライブ盤の方が音質がよく、これを聴くとタッチや響きの変化がEMI盤よりもよく聴き取れる。演奏時間はEMI盤とほぼ同じなので、テンポ設定はほとんど変わっていない。
最大難所の第14変奏を省略しているのを差し引いても、この曲をライブでほぼ完璧に弾いてしまうのはやはり凄い。

Arturo Benedetti Michelangeli: Live in Warsaw 1955Arturo Benedetti Michelangeli: Live in Warsaw 1955
(2006/10/24)
Johannes Brahms、

商品詳細を見る


                              

キーシンも技術的には全く問題なく、切れ味の鮮やかさではミケランジェリに劣らない(変奏によっては上回るかも)。第1巻最大の難所である第14変奏は、タッチの鋭さとスピード感があり細部に至るまで明瞭で、本当に凄い演奏です。
キーシンは全ての音をよく鳴らし、響きもクリアで伸びやかなので華麗さがあるが、音色や響き自体はやや単調で、微妙な陰影といったものは薄い。
テンポの速い変奏は非常に速いが、遅いテンポの変奏は非常に遅く、その差が大きい。
とても叙情豊かな演奏ではあるけれど、繊細というよりも情緒的。高速のフィルテで弾く変奏以外は、ルバートをたっぷりかけ、表現もねっとりと濃いめ。まるでロシアものを聴いているような粘りこさがある。ブラームスならもっとさらっと弾いて欲しい。(これは好みの問題。情念過多のロシア音楽とは相性が悪いので。)

Beethoven: Moonlight Sonata; Franck: Prélude, Choral et Fugue; Brahms: Paganini variationsBeethoven: Moonlight Sonata; Franck: Prélude, Choral et Fugue; Brahms: Paganini variations
(1998/03/10)
Ludwig van Beethoven,Johannes Brahms,etc.

試聴する


                              

1962年に再録音したカッチェンの演奏は、指回りは極めてよく速いテンポで、軽やかに難所を弾いていくが、ミケランジェリやキーシンのようなメカニックの精密・精緻な演奏ではない。カッチェンのパガニーニは、超絶技巧よりも激情と詩情をどう表現するかに味がある。
激情的な変奏では、フォルテは力強く、スピード感と軽快さもあり、演奏に勢いがある。難所の第14変奏は、キーシンのような迫力は感じさせないが、速いテンポで軽やかに弾いている。
高速のフォルテで弾くところでもメリハリを効かせているが、細かな起伏や”ため”があるのでリズムに若干の粘りやずれがある。
ほの暗い音色とやや濁りのある響きなので、ブラームスらしい渋みがよく出ていると思う。
テンポの遅い叙情性の強い曲想の変奏は、軽やかで柔らかい響きと繊細な表現がとても情感豊か。キーシンのようなウェットさは全くないのが良い。激情的な変奏との落差が面白い。
1巻第11・12変奏は軽やかで夢見るような優しさがあり、2巻第12・13変奏も透明感のある瑞々しさが美しい。
カッチェンはほとんどのブラームス作品を弾きこんで録音しているだけに、彼の弾くブラームスはさりげなく寄り添うような自然さがあって、何度聴いても良いものです。


Brahms - Julius Katchen - Variations On A Theme By Paganini Op 35



カッチェンはこの曲を2度録音している。
最初の録音は1958年のもの。1949~1968年の録音を集めたDECCAのBOXセットに入っている。
2度目の録音は1962年のもので、集中的にブラームス作品の録音に取り組んだときの演奏。ブラームス・ピアノ作品全集に収録されている。
58年録音時に比べて、62年録音の演奏は、テンポが上がってスピード感が増し、以前はやや重かったタッチが軽快になり、技術的な切れや安定度も増している。曲想のつけ方もよりダイナミックになり、最初の録音よりも演奏のレベルがかなり上がっている。

試聴する(米国amazonサイト:DISC1-トラック1~2)


このCDは、全集からパガニーニバリエーションやヘンデルバリエーション等をカッティングした廉価盤。
2つのバリエーションに加え、2つのラプソディ、4つのバラード、ピアノ・ソナタ第3番、インテルメッツォなどの主要曲をカップリング。全集までは必要ないけど、カッチェンのブラームスをいろいろ聴いてみたい人には良いCD。
Handel Variations / Paganini VariationsHandel Variations / Paganini Variations
(1990/10/25)
Brahms,Katchen




 『ジュリアス・カッチェンにまつわるお話』

 ジュリアス・カッチェンのディスコグラフィ

tag : カッチェン ブラームス パガニーニ ミケランジェリ キーシン

※右カラム中段の「タグリスト」でタグ検索できます。
Secret
(非公開コメント受付中)

カレンダー
07 | 2017/08 | 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
ブログ内検索
最近の記事
最近のコメント
カテゴリー
タグリスト
マウスホイールでスクロールします

月別アーカイブ

MONTHLY

記事 Title List

全ての記事を表示する

リンク (☆:相互リンク)
FC2カウンター
プロフィール

yoshimi

Author:yoshimi
<プロフィール>
クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

お知らせ
ブログ記事はリンクフリーです。ただし、無断コピー・転載はお断りいたします。/ブログ記事を引用される場合は、出典(ブログ名・記事URL)を記載していただきますようお願い致します。(事前・事後にご連絡いただく必要はありません)/スパム投稿や記事内容と関連性の薄い長文のコメント、挙動不審と思われるアクセス行為については、管理人の判断で削除・拒否いたします。/スパム対策のため一部ドメインからのコメント投稿ができません。あしからずご了承ください。