カッチェン《ブラームス:ピアノ作品全集》より (13)シューマンの主題による変奏曲 

2009, 04. 08 (Wed) 20:08

ブラームスの変奏曲は、パガニーニとヘンデルの主題をモチーフにした2曲が有名だが、他に「シューマンの主題による変奏曲」、「自作主題による変奏曲」、「ハンガリー舞曲の主題による変奏曲」、「主題と変奏」(弦楽六重奏曲第1番の第2楽章のピアノ独奏版)を残している。

このうち、「シューマンの主題による変奏曲 Op.9」は、シューマンの「色とりどりの小品」(雑記帳)の中の、5つのアルバムの綴りの第1曲の主題による。16の変奏で構成され、クララに献呈された曲。(楽曲解説)

当時、シューマンは精神的病が昂じて、ライン河に投身自殺を図った後、精神病院に収容されていた。妻のクララはシューマンの看病や演奏活動で苦労していたので、ブラームスはクララへの慰めとシューマンへの敬意を込めて、この変奏曲を作曲したという。
この曲は、ヘンデルやパガニーニのバリエーションに比べれば、主題の旋律が変奏のなかでシンプルな形で展開されるので、ブラームスの変奏曲にしては単調さを感じる。

作曲した経緯と叙情性の強い旋律からいえば、この曲は誰が弾いても哀感に満ちた曲にはなるが、カッチェンの弾き方はとりわけその傾向が強い。
柔らかく消え入りそうな弱音で淡々と弾いていると、心の奥深くに沈潜しているような雰囲気がする。時おり突発的に強く鋭い打鍵のフォルテが鳴ったり、その逆だったりと、かなり沈潜した心の中から感情が噴き出るような激しさもあるにはあるが、弱音で弾いていると、音符の間から涙が零れ落ちてくるような哀しさが漂っている。
まるでこの曲が哀しさのなかに浸されているかのように、切々と訴えかけてくる極めて叙情性の強いピアノ。哀しいときに聴くと、さらに物哀しくなるに違いない。
それに、この演奏はステレオ録音のはずなのに、なぜかモノラル録音のようなこもり気味の固く丸い音がする。このモノラルめいた訥々とした音色が、その雰囲気に輪をかけている。それを強く出すために、こういう音色にしているのかとさえ思える。本当に暗い。

Brahms: Works for Solo PianoBrahms: Works for Solo Piano
(1997/11/11)
Julius Katchen

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